2018.05.14

「西郷どん」と「翔ぶが如く」:奄美大島の描き方の違い

昨晩(2018年5月13日),「西郷どん」第18話「流人 菊池源吾」が放送された。奄美大島編の開始である。とぅま(愛加那)を演じた二階堂ふみが「全部持ってった」(参考)と評判である。

さて,西郷を取り上げた大河ドラマといえば,18年前の「翔ぶが如く」がある。このときは,西田敏行が西郷を,鹿賀丈史が大久保を,石田えりが愛加那を演じていた。そういえば,西田敏行&石田えりといえば「釣りバカ日誌」でも夫婦役だった。

当時

  • 西田敏行42歳
  • 鹿賀丈史39歳
  • 石田えり39歳

さて,その「翔ぶが如く」では奄美大島の話は第12話から第16話までの5回にわたって登場する。本放送の日と各話のタイトルは次の通り:

  • 1990年04月01日(日) 翔ぶが如く(12)「吉之助入水」
  • 1990年04月08日(日) 翔ぶが如く(13)「正助の布石」
  • 1990年04月15日(日) 翔ぶが如く(14)「桜田門外の変」
  • 1990年04月22日(日) 翔ぶが如く(15)「南国の女」
  • 1990年04月29日(日) 翔ぶが如く(16)「吉之助帰る」

「翔ぶが如く」ではそれなりの話数を割いて奄美大島の話を描いている。しかし,大久保利通もまた主人公であるため,各話では薩摩藩内の政争の描写について時間が割かれ,奄美の生活を描くことにあまり重きが置かれていなかった。

これに対して「西郷どん」では奄美大島での生活が一話全体にわたって描かれている。これは,原作者と脚本家が奄美大島での生活を西郷の転機として重視していることによる。ここが,司馬遼太郎の視点との違い。

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2018.05.12

Eテレで"Homme Less"放映

昨年の5月,YCAMで『ホームレス ニューヨークと寝た男』(トーマス・ヴィルテンゾーン監督 2014年)を観てきた(参照)。

ニューヨークで暮らす,ホームレス・フォトグラファーにして俳優のマーク・レイ (Mark Reay)を追ったドキュメンタリー。

その圧縮版ともいえるドキュメンタリーがEテレで放映されていたので見た(Eテレ「ドキュランドへようこそ!」)。


Homme Less Trailer from Filmfestival Kitzbühel on Vimeo.

改めて見たが,やはり面白かった。

前半,ホームレスでありながらスタイリッシュに充実した生活を送るクリエイターとして登場する,ジョージ・クルーニー張りのイケメン,マーク・レイ52歳が,後半では強がりと弱音を繰り返すおっさんにしか見えなくなってくるという変化が面白い。

この人,どうなったのか気になったので,Wikipediaで調べたところ,2015年時点では,ニューヨークに住み,俳優およびモデル業を続けている,としか書いていなかった。

その後が気になったのでさらに調べてみたところ,彼のInstagramを発見した:

markreay66

まだ頑張っているようで何よりである。

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2018.05.04

ワン・ビン監督『苦い銭』を観てきた

YCAMでワン・ビン (Wang Bing) 監督『苦い銭(苦銭)』を見てきた。

第73回ヴェネツィア映画祭オリゾンティ部門脚本賞,ヒューマンライツ賞受賞。

Snigaizeni

中国湖北省湖州には個人経営の縫製工場が18000ある。そこで働く出稼ぎ労働者の日常を描いたドキュメンタリー。


ヘッドマウントディスプレイを装着しているかのような圧倒的な没入感。 カメラマンの存在を感じさせない。

中国の人々のせわしなさ,町の喧騒ぶりにうちのツマが疲れ果てたほど。

会話していてもミシンに添えた手を休めない女性たちがいる一方で,酒におぼれるダメ男もいる。安徽省から出てきて店を開くも喧嘩の絶えない夫婦もいる。


小生は今から十年前に中国内陸部を何回も訪れ,湖北省にも足を運んだことがあるが,その時の街の様子を思い出し,懐かしさすら感じた。

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2018.04.16

ウォン・カーウァイ『欲望の翼』 | 王家衛『阿飛正傳』を観てきた

1960年4月16日3時1分前
君は僕といた
この1分を忘れない――


YCAMで,ウォン・カーウァイ(王家衛)『欲望の翼(阿飛正傳)』デジタルリマスター版を観てきた。

Yokubounotsubasa

オープニング。ゆっくりとパンしていくヤシ林の美しさ。

温帯夏雨気候の都市ならではの気怠さと,登場人物たちの徐々に嵩じていく焦燥感とが映画全編を支配している。

ヨディ,スー,ミミ,サブ,タイド,男女の思いがすれ違う。

レスリー・チャン,マギー・チャン,カリーナ・ラウ,ジャッキー・チュン,アンディ・ラウ,香港のスーパースターたちが一堂に会した奇跡の作品。

ほんとに香港の俳優陣は魅力的だ。北京官話もままならないのに,広東語を勉強しようかと思ったぐらい。

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2018.04.13

大林宣彦監督『花筐』を観てきた

ゆきずりの
まぼろしの
花の宴
苦しくも
たふとしや
檀一雄


YCAMで大林宣彦監督の遺作(まだ生きています)『花筐』を観てきた。

いやー,どえらい映画である。

太平洋戦争直前,大学予科の学生たちと女学生たちの青春群像。

爽やかなものを想像すると大間違い。バッハの無伴奏チェロ組曲が流れ,唐津くんちの山車が走り,黒澤明の『夢』や鈴木清順の『ツィゴイネルワイゼン』を上回りかねないドギツイ映像美の中で,濃いぃ面々が命の炎を燃やす。

大学予科の学生を演ずるのは,窪塚俊介,満島真之助,長塚圭史,柄本時生。この人たちが18~20歳を演ずるのだから凄い。強烈すぎる笑顔の窪塚俊介,やたら脱いでる満島真之助,生きてるのか長塚圭史,安定の柄本時生。

女学生陣も,お人形さんのような矢作穂香(結核に侵された薄幸の美少女),まあ普通の山崎紘菜,不穏な門脇麦と,とても濃い。そして,窪塚俊介演じる榊山俊彦の叔母役の常盤貴子の妖艶さ。

ラストシーンも強烈。観客に向けた大林宣彦監督のメッセージが炸裂。

君は飛べるのか?!

大林宣彦監督は『野火』を撮った塚本晋也に対して,「自分は戦後の映画監督,君は戦前の映画監督」と言ったらしいが,本作でその意味が分かったような気がする。

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2018.04.09

「X-MEN」スピンオフ・ドラマ「レギオン (LEGION)」のSeason 2が始まってしまった

「X-MEN」スピンオフ・ドラマ「レギオン (LEGION)」のSeason 2が始まってしまった。

以前,本ブログで紹介したように,このドラマのSeason 1は凄まじく面白かった(参照)。

Season 1の最終回,主人公デヴィッド・ハラー (レギオン;ダン・スティーブンス)の脳内からシャドウキング=レニーが追い出されたものの,レニーオリバーと共に旅立ってしまった。そして,デヴィッドは謎の球体に吸い込まれて行方不明になってしまった。

それを受けての新シリーズスタートである。

新シリーズ第1話では,デヴィッドはいつの間にか救出されているのだが,様子が変(まあいつも変だが)。デヴィッドは数日行方不明になっていたように感じているが,実際には1年近い月日が経過していた。

その間,シャドウキング=レニーは世界を回って,人々の精神を壊し続けている。シャドウキングにやられた人々は歯をガタガタ言わせる謎の症状を呈していた。デヴィッドをはじめとするミュータントたちは,かつて敵だったディヴィジョン3と協力してシャドウキングを捕まえようとしている。

ディヴィジョン3の指揮を執っているのがフクヤマ提督という虚無僧姿の謎の人物。本人はしゃべらず,口ひげを生やした3人の女性(ロボットらしい)が代わりにしゃべるという面白設定。フクヤマ提督は幼い頃,大脳皮質にデバイスを埋め込まれたサイボーグであり,デヴィッドですら心を読み取ることができない。

それにしても,このドラマの魅力は現実と妄想の区別がつかなくなるというところ。以前の記事でも述べたが,脳の内外の出来事が入り乱れて,まるで映画「インセプション (Inception)」を見ているかのような奇妙で魅力的で混乱した映像世界が展開されている。第1話の途中で紹介された,荘子の「胡蝶の夢」の話が,物語全体を暗示している。

脳内の人格とも言えるレニー(オーブリー・プラザ)の狂気に満ちた演技がとても良い。

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2018.04.01

スティーブン・ノムラ・シブル監督"Ryuichi Sakamoto: CODA"を観てきた

YCAMでスティーブン・ノムラ・シブル監督"Ryuichi Sakamoto: CODA"を観てきた。

Coda

2012年から5年間の密着取材によって,震災以降の坂本龍一の音楽の変化,アルバム"async"の制作過程を追ったドキュメンタリー。

ここ数年間のキョージュの日々の生活だけでなく,YMO時代はもちろんのこと,「戦場のメリークリスマス」,「ラストエンペラー」,「シェルタリングスカイ」の映画音楽を担当した際の制作風景や裏話も見ることができ,盛りだくさんの内容である。

キョージュがタルコフスキーを,映画監督としてだけではなく,音楽家として尊敬しているということが,この映画における最大の発見である。

たしかに本作で引用されているタルコフスキー『惑星ソラリス』の一シーン,バッハのコラール(BWV639)が流れる中,クリス・ケルビンがハリーとともに無重力状態で浮かび上がるシーンは,映画を見ているというより音楽を聴いているような感じである。

キョージュの"async"に収められた"Solari"はこのシーンに対するオマージュというように受け取られた。

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2018.03.31

映画『ウィンストン・チャーチル』公開記念(2):『マラカンド野戦軍物語』第3章公開

映画『ウィンストン・チャーチル』公開記念第2弾ということで,

サー・ウィンストン・チャーチルの若かりし頃の作品『マラカンド野戦軍物語』の第3章を訳したので公開する次第である。

第2章まで訳すのに5年近くかかっていたくせに,第3章はここ数日で翻訳できた。やればできる。

「Malakand-field-force-03.pdf」をダウンロード

チャーチルの文章の癖がわかってきたかもしれない。

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2018.03.25

トム・フォード監督『ノクターナル・アニマルズ』を観てきた

YCAMでトム・フォード監督『ノクターナル・アニマルズ』を観てきた。

Nocturnalanimals

コンテンポラリーアートを扱うギャラリーのオーナーであるスーザン(エイミー・アダムス)のもとに,前夫エドワード(ジェイク・ギレンホール)から,彼が書いた小説『夜の獣たち(ノクターナル・アニマルズ)』の原稿が送られてくる。それは強姦殺人事件を描いたバイオレンス・サスペンスだった。小説にのめり込むスーザンの脳裏には,エドワードとの過去がフラッシュバックする……。

自身の名前のブランドを持つ,ファッションデザイナーのトム・フォードが独自の美意識を以て作り上げた,観客を圧倒する映画。とくにアベル・コジェニオウスキによる荘厳な音楽とともに始まるオープニング・シーンには度肝を抜かれる。スーザンのいるゴージャスな富裕層の世界と,小説内の砂ぼこり舞うバイオレンスな世界との対比が見事。

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2018.03.23

映画『ウィンストン・チャーチル』公開記念:『マラカンド野戦軍物語』第2章まで公開

映画『ウィンストン・チャーチル』公開記念!

ということで,サー・ウィンストン・チャーチルの若かりし頃の作品『マラカンド野戦軍物語』を第2章まで訳したので公開する。

同書は5年近く前に一度,第1章を訳して公開したことがある(参考)。

その後,だらだらと訳したり訳さなかったりしたものの,ようやく2章まで漕ぎつけたので,披露する次第である。

「Malakand-field-force-01-02.pdf」をダウンロード

前にも書いたが,チャーチルの巧みな文章を日本語に直すのは難しい。

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