2018.04.30

吉田類『酒は人の上に人を造らず』を読む

今年の正月下旬に上梓された吉田類『酒は人の上に人を造らず』(中公新書)を読み終えた。酒に関する蘊蓄ではなく,酒場の人間学,参与観察の本である。

吉田類らしく読んでいて楽しく余情のある文章。「軽妙洒脱」と評したいところだが,「洒脱」には「俗気がなく,さっぱりしている」という意味があり,「俗気」の部分で引っかかるので,「軽妙情味」という造語で評しておく。

以前読んだ,『酒場詩人の流儀』(中公新書)との違いは,一つ一つのエッセイの長さ。

『酒場詩人の流儀』には「新潟日報」や「北海道新聞」に掲載された,2ページ程度の短いエッセイがまとめられていたのだが,この『酒は人の上に人を造らず』には「中央公論」に掲載された,7ページぐらいのそれなりの長さのエッセイがまとめられている。

一つのエッセイには数か所の酒場のことが取り上げられている。東京・神田の話だと思って読んでいると,いつのまにか場面は宮津・天橋立に飛んでいく。

「酒は,時空を自在に浮遊する息吹を魂に吹き込む妙薬でもある」(176ページ)

と著者が書いているように,酒を介してあらゆる場面が一つのエッセイにまとめられているのである。


◆   ◆   ◆


このエッセイ集を読んでいて,頻繁に出くわすのが,著者が意識を失うところ。

酔って帰った博多のホテルで寝込み,筏で漂流する悪夢を見て飛び起きたところ,風呂のお湯を出しっぱなしにして大洪水を起こしていたという話。山登りを終えて疲労困憊したところで,訪れた河川敷の酒場「たぬきや」に行ったはずが,気がついたら自分の職場での新年会になっていたという話。

こんなに朦朧としていて大丈夫か?と思うのだが,翌日にはアルコールは分解され,二日酔いはないというのだから驚かされる。


◆   ◆   ◆


酒や人が好きでありながら決してのめり込まないのが良い。老生が好きな一文を引用する:

「屋台の灯とネオンが揺れる運河沿いの光景は,どこか浮世離れしている。そんなシーンの中へ紛れるには,ファッションだってさりげない工夫がほしい。ダークな色使いで,ハットかハンティングを被り,軽いストールを巻く。あれっ,どこかで見かけたような……。」

酒場に溶け込む自分自身さえも観察する視点が面白い。


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2018.04.17

スパークリング獺祭を飲む

「純米大吟醸スパークリング50 獺祭 (Sparkling 50)」を飲んだ。

お馴染み「獺祭」(旭酒造)の派生商品である。

アルコール分14度,精米歩合50%。

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この酒,面白いのは,上澄みの辛い部分と,底の方の滓(おり)の溜まった甘い部分との味のグラデーションが楽しめるところ。純米酒から乳酸飲料に変化するように感じられる。

甘いとは言っても,以前に飲んだ「スパークリング雁木」(参照)の方が甘くてまろやかである。

最近はこういう和製シャンパンとでもいうべきものが増えてきて面白い。

日本酒好きには邪道と呼ばれるかもしれないが,「変っていくのが日本酒の伝統」(by 旭酒造・桜井博志会長)であるから,スパークリング清酒はアリ,である。

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2017.06.20

【雁木】「スパークリング雁木」を飲む

獺祭はメジャーになり過ぎたので,他の地酒を飲みたいと思うわけである。

以前紹介した村重酒造の「金冠黒松」は値段と味のバランスから言うと,獺祭よりもコストパフォーマンスが良いと思う。「2011年春季・全国酒類コンクール・純米酒部門第1位」だし。その辺の話はだいぶ前に「坂口謹一郎『日本の酒』を読みながら」という記事の中でダラダラと書いた。

今回紹介するのは岩国の八百新酒造の「雁木」,それも珍しい「スパークリング雁木」である。純米発泡にごり酒。

昨日,ちょっとしたお祝い事があったので,飲んでみた。

すっきりした甘口で(ほんとに甘い。和製シャンパンだ),お嬢様・奥様方にも喜ばれること請け合い。アルコール度数は14度。

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720ml,1700円。広島駅のお土産コーナーで買った。

シャンパン以上の発泡性があるので,開栓時には細心の注意が必要だ。キンキンに冷やしたうえでほんのわずかずつ開栓しないといけない。泡が吹き出しそうになったら閉める。そしてまた微妙に蓋を回して開ける――という作業を数分間繰り返してからようやく飲める。

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忍耐力が必要だが,飲んでみると労力に見合った味わいが楽しめる。飲み過ぎて二日酔いにならないように。

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2017.03.06

井筒屋山口店でイタリアワイン爆買い

この日曜日,ツマとともに井筒屋山口店に行ったわけである。

イタリア展という物産展に惹かれて。

オリーブの実やオリーブオイル,総菜やフォカッチャや焼き栗を買い求めたわけだが,最大の買い物は赤ワイン6種セット5400円プラス白ワイン2052円。

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写真左から6本が赤ワインで,右の1本が白ワイン。

赤ワインはもうワンランク上の6本セット10800円もあったのだが,小生それほどワイン通ではないので,お財布に相談して5400円で6本の方を選んだ次第。

赤ワインの内訳だが,写真左から紹介すると,

味わうのはこれから。アル中にならぬよう,少しずつ消費したいと思う。

さて,白ワインの方は

Castello Svevo Biancoという。シチリア産。カタラット種,インツォリア種。

オーガニックワインとのこと。

買ってきた総菜と一緒に賞味したわけだが,フルーティ。飲んだ瞬間は結構甘く感じるが,その後はそれほど後を引かないので,食中酒としてちょうどいい。

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品質保証のシンボルはカワセミである。

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2016.03.21

グーデン・カロルス・キュヴェ・ヴァン・ド・ケイゼル・ブルー (Gouden Carolus Cuvée Van de Keizer Blauw)

昨年のクリスマスにツマから

「グーデン・カロルス・キュヴェ・ヴァン・ド・ケイゼル・ブルー (Gouden Carolus Cuvée Van de Keizer Blauw)」

の2014年度版と,そのクリスマスバージョン,

「グーデン・カロルス クリスマス」

をもらった話は前に書いた(参照

「グーデン・カロルス クリスマス」の方はその時にすでに飲んだ。

先日お祝い事があったので,とっておいた「グーデン・カロルス・キュヴェ・ヴァン・ド・ケイゼル・ブルー」の方を飲むことにした。

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ワインやシャンパンと同じようにコルクで栓を施されている。

遠目だとラベルが見にくいので,拡大した写真がこちら。

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前にも書いたが,「グーデン・カロルス」はベルギー・ビールの名高いブランドの一つ。コリアンダー,オレンジピール等のスパイスが使われるため,法令上はビールではなく,発泡酒扱いである。

「グーデン・カロルス・キュヴェ・ヴァン・ド・ケイゼル・ブルー」は,こげ茶色で酸味・苦みはほとんどなく,豊かな香りと甘みがある。スパイスのおかげで,ワインやサングリアを思わせる味わいとなっている。

鶏の唐揚げと一緒に食べたら実に良かった。

「グーデン・カロルス・キュヴェ・ヴァン・ド・ケイゼル・ブルー」はカール5世の誕生日である2月24日を祝って作られる特別なビールである。"Cuvée"というのは特別な発酵槽のこと。人気があるみたいでなかなか手に入らない。

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2015.12.30

ヤッホーブルーイングの罠にはまった

近所のローソンで「よなよなエール」ほか,ヤッホーブルーイングのビールが売られている。

売れ行きは大変よろしいようで,先日,小生が当該ローソンに寄ったとき,「よなよなエール」は最後の一本が置かれているだけだった。

「よなよなエール」の他は「東京ブラック」,「インドの青鬼」,「僕ビール,君ビール。」があったぐらい。慌てて一本ずつ買った。

もちろん,キリンやアサヒやサッポロやサントリーといった大手4社のビール,あとギネスやバドワイザーとったメージャーどころは並んでいたが,こちらが興味を持っているのはヤッホーブルーイングのものだけ。

なんというか,この会社の作るエールビール(「東京ブラック」は黒ビールだけど)のフルーツ系の香りに虜になってしまうわけである。ビールは苦ければいいってもんじゃない。匂いも味もいろいろなものが楽しみたい。そういう意味では他社のものだが,先日の「グーデン・カロルス クリスマス」には大いに楽しませてもらった(ちなみに「グーデン・カロルス キュヴェ・ヴァン・デ・ケイゼル・ブルー」はまだとってある)。

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ということで,「東京ブラック」,「インドの青鬼」,「僕ビール,君ビール。」の3つを空けさせてもらった。

「東京ブラック」や「僕ビール,君ビール。」もよいのだが,今回,特に印象に残ったのが「インドの青鬼」。IPA,情報処理機構ではなく,インディア・ペールエールというスタイルのビールで,苦みが強烈。ホップを通常のビールの4倍使っているという。アルコール度数も7%と,普通のビールよりも高い。

先ほど「苦けりゃいいってもんじゃない」と書いたくせに苦いビールが印象的とは何事,と思われるかもしれないが,この苦みは強烈な割にはあとに残りにくい。あと,この会社の他のビールと同様,柑橘系のアロマがとても豊かに香る。

ここ数年,メジャー系のビールに飽きてきて,財布にも優しい発泡酒やハイボールに逃げていたのだが,ヤッホーブルーイングが台頭してきて以来,小生のビール回帰が始まっている。ここの製品には財布が緩みっぱなしである。


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2015.12.25

グーデン・カロルス・クリスマス

クリスマスっつーことで,ツマが小生にプレゼントしてくれたのは,かの『BAR レモンハート』でもおなじみの

「グーデン・カロルス・キュヴェ・ヴァン・ド・ケイゼル・ブルー (Gouden Carolus Cuvee Van de Keizer Blauw)」

の2014年度版と,そのクリスマスバージョン,

「グーデン・カロルス クリスマス」

である。

「グーデン・カロルス」はベルギー・ビールの名高いブランドの一つ。ヘットアンケル醸造所で作られるこげ茶色の発泡酒である。コリアンダー,オレンジピール等のスパイスが使われるため,法令上はビールではなく,発泡酒扱いである。

今日は「グーデン・カロルス クリスマス」の方をいただいた。

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アルコール度数は10.5%であり,日本の通常のビールのアルコール度数,5~5.5%に比べると高濃度。そのせいか,賞味期限は2018年8月とかなり長い。

ヘットアンケル醸造所の「グーデン・カロルス クリスマス」の紹介記事によると,2002年にこの「~クリスマス」が初めて作られたが,それ以前の35年間はクリスマス用ビールは無かったという。

酸味,苦味は極めて控えめ。洋ナシやチョコレートを思わせる味わいで,まあ,グリューワイン(参照)のビール版といったところ。この季節にふさわしい。美味。

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2015.11.05

双葉文庫に『BARレモン・ハート』が入っている件

毎週月曜日の晩がえらいことになった,という話は前に書いた(参考)。

月曜日午後9時にBS-TBSの『吉田類の酒場放浪記』を見たのち,午後10時からはBSフジでドラマ『BAR レモンハート』を見るという流れが出来てしまったからである。

若いころは「漫画アクション」を読んでも,『BAR レモンハート』は読み飛ばす漫画だったのだが,今はじっくり読んでしまう。

かつて「週刊漫画ゴラク」でラズウェル細木の『酒の細道』を読み飛ばしていたのが,今読むととても面白いのと同じ現象である。

中村梅雀がマスターを務めるドラマ『BAR レモンハート』を見ていると,原作を読みたくなるのだが,まさか今から全館を揃えるわけにはいかない。困っていたら(困らなくても良いのだが),行きつけの宮脇書店でちょうどいいものを発見した:

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つい先月,双葉文庫から出たわけである。まあ,ドラマ『BAR レモンハート』の放映に合わせたのだろうと思う。

ドラマでやっていた「女医さんとデート」と「1/150のプロポーズ」のエピソードはこの本に収められている。

ああ,ヴーヴ・クリコ・ラ・グランダム飲みてぇ。

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2015.10.13

「酒場放浪記」を見てから「レモンハート」を見るという流れ

先週から毎週月曜日の晩がえらいことになった。

諸兄もご存じのとおり,月曜日午後9時といったらBS-TBSの『吉田類の酒場放浪記』を見なくてはならない。月曜にNHKの「ニュースウォッチ9」を見るとすれば,よほどの大ニュースがある場合に限られる。

月曜の午後9時から10時まで『酒場放浪記』を見れば,あとは自由時間という感じだったのだが,先週から状況が変わった。

BSフジ開局15周年ということで,古谷三敏原作のドラマ『BAR レモンハート』が月曜午後10時から放映されるようになってしまったのである。梅雀がマスター役なんてはまり過ぎだろ。あと,番組の終わりにヨレヨレの古谷先生がご登場して素敵なバーのご紹介までするので一瞬たりとも気を抜けない。

酒番組のコンボはいい加減にしていただきたいといううれしい悲鳴をお伝えいたしました。

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2015.03.01

吉田類『酒場詩人の流儀』を読む

暑いプノンペンに居ながら,吉田類のエッセイ集『酒場詩人の流儀』を読んでいる。

この国,カンボジアは偉大なるクメール王朝の歴史を有してはいるが,数十年前に破壊しつくされ,一から立て直しをしている,実際にはとても若い国だ。

そのためか,日本人の目から見ると,日常生活に詩情が欠けているような気がする。

『酒場詩人の流儀』の一節を読んでから,現実のプノンペンに意識を戻すとそのようなことをを強く感じる。

これが建設ラッシュに沸き,交通渋滞に見舞われているプノンペンから離れて,遠く農村部に移れば,熱帯なりの別の情感が沸いてくるのかもしれないが。


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BS-TBSの人気番組「吉田類の酒場放浪記」を見ている限りは,口の回らない酔っぱらいのおじさんにしか見えないのだが,その頭の中ではこんなことを思いめぐらせていたのだな,という新鮮な驚きを感じるのが本書『酒場詩人の流儀』である。頻繁に山歩きをするなど,かなりのアウトドア派。本書を読んで今まで誤解していたことが判明した。本当に失礼いたしました。

文章がとても良い。ハンターたちと冬山を巡る話など,マーリオ・リゴーニ ステルン『雷鳥の森』を思わせる書きぶりだった。また,エゾヒグマのDNAタイプについて触れたり,草木虫魚に関する知識を嫌みのない範囲で披露するところは,松岡正剛『千夜千冊』のアウトドアバージョンという感じがする。吉田類の方が松岡正剛よりは5歳若いが。

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吉田類にとって人生は未知の海原に漕ぎ出す船旅であり,その船の名は「忘却号」という。

記憶が蓄積され続ければ,船は重みに耐えかねて沈んでしまう。適度な忘却によって船は軽さを維持し,新たな出会いへの航海を続けることができる。

本書の帯には吉田類の俳句が添えられている

「グッバイを鞄に詰めて冬の旅」(吉田類)


于武陵の

君に勧む金屈巵(きんくつし)
満酌辞するを須(もち)いざれ
花発(ひら)けば風雨多し
人生別離足る

の系譜に連なる秀句だと思う。そういえば,于武陵の漢詩の後半を井伏鱒二が

花ニアラシノ例エモアルゾ
サヨナラダケガ人生ダ

と訳していたが,この表現の方がずっと近い。


古来より酒と詩とはとても相性が良い。相性が良すぎて命を落とした詩人もいる。伝説によれば,李白は酔っぱらって,川面に映った月を取ろうとして溺死した。

吉田類もどこかの大衆酒場で人生を閉じるのでは……という不気味な予感が脳裏をよぎる。いや,本人はそう望んでいるのかもしれない。

兎も角も,酒と俳句とを友にして吉田類の旅は続く。

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