2017.12.31

スティーブ・シルバーマン『自閉症の世界 多様性に満ちた内面の真実』を読む

世の中は大晦日だが,時節と関係のない本を読んでいる。

スティーブ・シルバーマン『自閉症の世界 多様性に満ちた内面の真実』(ブルーバックス)だ。

講談社ブルーバックスに入る翻訳書は例外なく良い本が多い。

本書で取り上げられる自閉症を含め,脳機能障害と言われているものは,今や「脳多様性 (Neurodiversity)」という枠組みで捉え直されつつある。個性と障害の境界は無く,程度の違いとして考えるべきものとなったわけである。

以前,こういう本を読んだが,これも興味深かった。

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2016.01.06

今週のRedstone Diaryのお言葉

2001年以来,"Redstone Diary"を愛用しているのだが,ことしのDiaryは"Therapeutic"がテーマである。

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このDiaryではテーマに沿った絵画・写真・イラストが毎週掲載されているのだが,今週(2016年1月4日~10日)の絵画は清朝の医書の挿絵が掲載されている。

その挿絵の上部に記されている言葉:

問失力如何曰
宜正坐使両拳
於左右尽力按
膝而運叩歯嚥
液能補神氣力
無不足者也

以下は小生の訳:

【問】 力が出ないのですが,どうしたらよいのでしょうか?

【答】 落ち着いて正坐し,両手の拳を使って力を入れて両膝を揉んでください。そして,歯を噛みあわせ,つばを飲み込んでください。こうすれば神気が補われ,力が出ないということはありません。

「叩歯嚥液」というのが良くわからなかったのだが,調べてみたら,中国医学では叩歯(こうし)という口腔ケア方がある。上下の歯を噛みあわせることが健康法の一つであるとか。

そして嚥液というのはつばを飲み込むこと。中国医学では両方合わせて「叩歯嚥津」ということが多いらしい。

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2015.09.21

2015年生まれのイギリス人の三分の一が認知症になります

ラグビーワールドカップで日本が南アに勝った話でも読もうとガーディアン紙のウェブサイトを開いたら、別の記事に目がとまった。

"One-third of British people born in 2015 'will develop dementia"

「2015年生まれのイギリス人の三分の一が認知症になる」と言うことで、これは何かの病気が蔓延しているのでは、と思ったら、単に長寿のせいで認知症の問題が深刻になるという話だった。脅かさんといて。

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2014.03.14

ネット上で色覚検査をしてみる

GIZMODOなどで紹介されているのだが,色のブロックを並べ替えてグラデーションを構成することで色覚の能力を測定するサイトがある。

"Color Test - Online Color Challenge | X-Rite"

Xrite
(同ウェブページより)

小生も試してみた。色覚能力も必要だが,結構時間がかかるので根気の方がより必要である。

スコアが0点に近くなるほど色覚が確かだということになるが…

Colorchallenge

↑3点取れました。
結構いいんじゃないですか? それとも根気があるというべきか。


これをやったついでに以下のようなことを考えた。

色覚というのは目の能力がまず大事なのだが,認識の仕方というのも大事なんじゃないかと思った。つまり同じ赤系統の色でもJIS規格では赤,レッド,金赤というように分類している。目に入った色を言葉によってどれだけ分類できるか,つまり分節化(ソシュール)の仕方も色覚の能力に関係してくるのではないかと思った。

そのあたりは,今井むつみ『ことばと思考』(岩波新書・新赤版1278)が詳しく説明してくれる。

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2010.04.23

椅子に関するブログじゃないんですが・・・

当ブログのタイトルは「椅子は硬いほうがいい」なのだが、椅子に関するブログではない。

しかしながら、「椅子に関する資料はないんですか?」というお問い合わせがあったりしたので、ニーズには応えておこうと思う。

しらべてみると、椅子の硬さが直接腰痛に影響するわけではない。大事なのは、やわらかい椅子は姿勢を悪くしてしまうため、腰痛がおきやすいということである。逆に言えば、硬い椅子は姿勢が崩れにくいので、腰痛防止につながるということになる。

椅子と姿勢について詳しく述べているのはこのサイト:
腰痛改善大作戦 ~椎間板ヘルニアからの脱出経験~
ここのサイトの「椅子の選び方」を読むと良い。

しかしながら、「硬い椅子はダメ」とはっきり言っているサイトもある:
筋肉性腰痛の方へお願い」(島田カイロプラクティック)。

硬い椅子がダメだと言う理由として、「上半身の重みが、全部腰にかかる」ということを言っている。専門家の意見なので無視できないが、小生の経験からすると柔らかい椅子の方が腰痛がひどくなったような気がする。

小生としては「硬い椅子」->「姿勢が崩れにくい」->「腰痛防止」という説をとりたい。


 ◆   ◆   ◆


そういえば、今を去ること5年ぐらい前、ブログの書き始めの頃に、「なぜ硬い椅子のほうが良いか」という記事を書いたのを思い出した。


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2009.10.29

夢中対面(ゆめであえたら)

先日早朝、夢を見た。

先年死んだ筈の飼い犬が居て、小生に「『新聞』と『お新聞』の違いは何? 『仕事』と『お仕事』の違いは何?」等と質問したのである。

死んだ筈の犬が居て、しかも人語を解するあたり、今振り返れば、夢ならではの不条理さを感じる。しかし、夢を見ている最中あるいは夢から覚めた直後は、犬の子供っぽい質問に微笑ましさを感じ、また、もはや会えない筈の犬に会えて懐かしさを覚えたことは紛れも無い事実である。

さて、その前夜、小生は吉田真樹著『再発見 日本の哲学 平田篤胤―霊魂のゆくえ』(講談社)の「夢中対面」の件(くだり)を読んでいた。

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平田篤胤本居宣長の死後の弟子である。篤胤は宣長の著作を読むことを通じて宣長を敬慕していたものの、既に宣長はこの世には居なかった。ところが、篤胤は28歳のとき、夢の中で宣長に対面し、弟子入りを許された。これを「夢中対面」と言う。

「夢中対面」に関しては宣長の弟子たちから批判が寄せられたようである。『平田篤胤―霊魂のゆくえ』によると、弟子の一人、城戸千楯は「私の夢の中に本居宣長先生がお出でになり、平田篤胤氏を弟子にしたことをおっしゃるまでは、私は平田氏を先生の弟子とは思わない」と痛烈に批判している。近代合理性の視点から見れば千楯の批判は御もっともである。

しかし、篤胤にとっては夢は真実である。夢を信じる心は古代人の心性であり、篤胤はこの古代の心性を備えていた。近代合理性を備えた知識人である、宣長の弟子たちから見れば篤胤は時代錯誤的である。

しかし『平田篤胤―霊魂のゆくえ』は篤胤の「夢を信じる心性」をこのように擁護する:

それがいかに時代錯誤的に見えようとも、死者への思いを馳せたり、恋において狂おしいほど相手を思うということは、ごくありふれたことのようにも思える。<中略>(その)思いが叶えられる場所は夢であるほかない。夢はおのれの場所であるだけでなく、神・仏・思い人の場所でもある。だからこそ、夢を見る者・見させる者が相互に乗り入れ、両者が出会うことを可能にする「あやしき」辺境世界として夢はある。篤胤はそのような夢を信じた。篤胤は近世庶民と同じ、夢を信じる心性をもっていたのである。(同書55ページ)

夢と言うのは「睡眠時に脳が情報を保存するか否か取捨選択している際に知覚される現象」である、というのが有力な説のようである。近代合理性を備えたつもりの小生にとってはこの説は正しいものであると思われる。しかし、飼い犬との夢中対面を果たした小生としては、夢を信じる古代の心性を捨てがたくも思うのである。

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2008.11.21

癒し系ロボット・パロ,海外デビューの件

日本生まれの癒やしロボ「パロ」、デンマークで活躍へ」(読売新聞,2008年11月21日)

タテゴトアザラシの赤ちゃんをモデルにしたロボット,パロがデンマークの高齢者福祉施設に導入されることになったそうである.

パロは羽田空港出発ロビーにも置いてある(あった?)のでご存知の方も多いのではないかと思う.みんながなでるため,手垢で真っ黒になっていることもあった.下の写真は羽田空港においてあったパロである.口にくわえているのは実は充電器.
Paro01

パロは体をなでたりすると喜んで声を出したりする.嫌がらせをすると機嫌を損ねるらしい.羽田では嫌がらせをしている人を見たことが無いが.

パロを使っての治療をロボット・セラピーというらしい.いわゆるアニマル・セラピーと同系統のものである.アニマル・セラピーは動物にストレスが加わる可能性があるが,ロボットなら安心.

ちなみにパロを介護老人保健施設や特別養護老人ホームで使用したところ,老人たちの徘徊や奇声が無くなったとの話もある.その話はドキュメンタリーにもなった

パロを扱っている株式会社知能システムのちらし(いつのか忘れた)によると,パロ一式で35万円である.現在はいくらか知らないが:
Paro

もうちょっと安ければ欲しい気がする.

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2008.05.01

ライフ・ハック技術

図書館で借りたライフ・ハック技術の本を紹介する:
Ron Hale-Evans『Mind パフォーマンス Hacks ―脳と心のユーザーマニュアル―』

著者はテクニカルライターであり、ゲームデザイナーでもある。

Mind パフォーマンス Hacks ―脳と心のユーザーマニュアル―Mind パフォーマンス Hacks ―脳と心のユーザーマニュアル―
Ron Hale-Evans 夏目 大

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ライフ・ハックというのは、生活に工夫を加えることによって生産性を向上させることである。いや、自己の能力の開発といった方が良いか。今回紹介する本では「頭の武道」と言っている。

本書の序章「はじめに」では人間コンピュータ、メンタート(Mentat)が紹介されている。訓練によって生身のままで驚異的な情報処理を行う人のことである。SF「デューン」のシリーズに出てくる、抜群の記憶力、数理的処理能力、戦略立案能力を備えた人のことである。

「頭の武道」:ライフ・ハック技術を駆使しても到底こんな人にはなれないのだが、全くやらない場合に比べたら、やった方がはるかに生産性が向上する。そういうライフ・ハック技術を以下の8つの領域に分けて紹介しているのが本書である:
「記憶」、「情報の処理」、「創造力」、「数学」、「意思決定」、「コミュニケーション」、「明晰さ」、「知性の健康」。

どこから読んでもいいのだが、小生が熟読したのは「創造力」の章。何かを創造するためには環境から種を入れないといけないという話から始まり、発想法、想像力を高める方法、夢を利用する方法、他の人になりきる方法、自らの発想の道筋をトレースする方法などが紹介されている。発想法だけでも、単純なアイディアのプールからランダムな組み合わせによって複雑なアイディアを構成する手法、de Bono(水平思考を生み出した人)のPO、Bob EberleのSCAMPER、金言・警句による手法など様々な方法が紹介されている。

ハウツー本の一種ではあるが、グレッグ・イーガンやファインマンなど理工系の人間が喜びそうな話からの引用がちりばめられており、無味乾燥にはなっていない。メンタートの話もそもそもそうである。自らをチューン・アップすることの楽しみが伝わってくる。

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2008.03.24

アーサー・C・クラーク最後の日々

先日亡くなったアーサー・C・クラークについては様々な追悼記事が出ているが、Jeff Greenwaldによる次の記事はクラークの偉大な意識が徐々に衰えて行く様子を知る上で興味深い記事である:
成長を止めない精神:40年来の友人によるアーサー・C・クラークへの弔辞」(2008年3月21日 WIRED VISION)

アーサー・C・クラークの死に対してはNASAもコメントを公表している:
"NASA Remembers Arthur C. Clarke -- Share Your Thoughts"(2008年3月21日 NASA)

NASAの高官は「アーサー・C・クラークは天賦の才能を持った科学とSFの作家だった。未来に対する比類ない洞察力の持ち主であり、『宇宙旅行がいかに社会、経済、そして人類自身を変えていくか』という希望に満ちたヴィジョンを20世紀後半、無数の若者に吹き込んだ」と称えている。NASAのアーサー・C・クラーク追悼ページには一般の人々からの数多くの弔辞が寄せられている。

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2008.01.30

China Free

中国はよく出張していた国で、取り立てて嫌いではないのだが、こういうのは困る:「中国製ギョーザで10人中毒症状 農薬検出 千葉・兵庫」(アサヒコム、2008年01月30日)

中国の生産者には気をつけてもらわないと、"China Free"と言われちゃうわけだ(「中国が自由」という意味じゃなくて、「中国産のものを含まない」という意味)。

そういえば、塗料に鉛が含まれていたため、大量リコールになった中国の玩具メーカーの工場長、自殺しちゃったんだよなあ:「『鉛玩具』製造の中国人工場経営者が自殺」

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