陳舜臣『孔雀の道』読了
『孔雀の道』
この物語は昭和43年,梅の蕾がようやく膨らみかけた頃に始まる。
昭和16年,神戸に生まれ,14歳まで日本で育った英日混血児ローズ・ギルモアは,13年ぶりに故郷の地を踏む。
英語教師として女子大学に赴任するためだが,本当の目的は,戦中にスパイ容疑で捕まった英国人の父と戦後直後に火災で死んだ日本人の母の謎を解くためだった。
ローズの手伝いをするのは,インド帰りの三十歳そこそこの男性,中垣照道。ローズが渡日する際に乗っていた客船ウーチャン号の同乗者で,日本への船旅の間に知り合った。聡明でしっかりしたローズと好対照で頼りない感じの宗教家だが,ローズを精神的に支え続ける。
神戸,小諸,金沢,広島と日本各地を巡りながら,ローズと中垣はローズの母の謎に迫る。そして見えてきたのは戦前・戦中の諜報活動,ギルモア夫妻の愛憎劇。
主人公たちは推理ゲームの駒ではなく,ちゃんと生きている。悩みながら前進していくところが良い。一種の青春小説ですな,これは。
日本推理作家協会賞受賞作というだけある。
陳舜臣は歴史作家として知られるが,昭和物もうまい。
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