『馮道』読んだ
礪波護『馮道』 (法蔵館文庫) を読んだ。
やはり中国史は面白い。
馮道とは,唐滅亡から宋誕生に至る混乱期に活躍した政治家である。
その人柄と有能さを買われ,「五朝八姓十一君」,つまり,後唐・後晋・遼・後漢・後周の5つの王朝の11人の皇帝に仕えた。
中国では古くから「忠臣は二君に仕えず」(史記)という考え方がある。ある君主に仕えた後は,新しい君主には仕えないのが忠義というものである,という考え方である。馮道の死後に成立した宋王朝以降は,とくにこの考え方が強まっていく。
この「忠臣は二君に仕えず」という考え方からすれば,11人もの皇帝に仕えた馮道は,不忠の極みである。
だが,王朝の交代が激しい乱世の中では,馮道の姿勢は不忠とは言えない,というのが本書の主張である。
馮道は君主に忠誠を誓っているのではなく,国,もっと言えば国を形成する民衆に忠誠を誓っているのである。
本書にはこう書かれている:
「戦火にさらされながら,軍閥から搾取されつづけ,生きた心地もないその日暮らしの生活を送っている大多数の庶民の苦痛を,すこしでも軽減してやることを,精いっぱいの仕事とするより他はない。これは馮道が体験から得た人生哲学であった」
君ではなく国に忠であることが馮道の生きる指針である。
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