『オカルト2.0』を読む
竹下節子『オカルト2.0』を読んだ。
近年のフランスのオカルト事情や動物磁気説で知られるメスメル(1734~1815)の栄光と挫折の生涯など,興味の尽きない話題が提供されている。
著者はオカルトのビジネス化やカルト化に警戒しつつも,カオスの時代を生きる方法としての可能性を「オカルト2.0」に見出している。
死,病,事故,別れなど人生には避けられない「悲劇」もあるけれど,それはある意味で単純なものだ。その他に自分でややこしくこじらせているさまざまな心理的葛藤がたくさんあって毎日の現実を汚染している。
実存的な悲劇と心理的葛藤とを分けなくてはいけない。葛藤を一つひとつ解決する「治療」を求めるのではなく,それらを抱えたままで「大いなる健康」に向かう一つの方法がオカルト2.0であるかもしれない。(「あとがき」より)
従来のオカルトは正統的な科学や宗教の裏側に在ったり対抗していたりしたのだが,今や科学とオカルトは対立するものではなく,協調しうるものだ,というのが本書のスタンスである。
それにしても,ビジネス界隈で流行していた「コーチング」の源流が,神秘思想家ゲオルギイ・グルジエフやその影響下で形成されてきたエニアグラムにあったというのは初めて知った。不明を恥じる次第である。
オカルトとビジネスは実に相性が良い(有名な経営者がスピリチュアルなものに傾倒している例はいくつもある)。
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