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2023.10.31

ケストナー『一杯の珈琲から』(小松太郎訳)を読む

帰路の途上,車の中でエフエム山口・大和良子司会の「COZINESS」を聞いていたところ,古い歌「一杯のコーヒーから」が流れてきた。

これを聞きながら,

――そういえば,本棚に未読のまま放置していた『一杯の珈琲から』(ケストナー)があった――

と思い出し,ついに読む決意をした。

エーリヒ・ケストナーによる日記体のユーモア恋愛小説である。

「一杯の珈琲から」という邦題は,訳者の小松太郎によるものである。原題は"Der Kleine Grenzverkehr"で直訳すれば,「小さい国境往来」となる。

主人公ゲオルク(ドイツ人)は夏休みを音楽の都ザルツブルク(オーストリア)で過ごす計画を立てる。しかし,現金の国外持ち出し制限で,ひと月10マルクしかオーストリアに持ち出すことができない。そこで,歌劇をオーストリアのザルツブルクで楽しみ,宿泊をザルツブルクの隣,ドイツのライヘンハル(バート・ライヒェンハル,Bad Reichenhall)で済ませるということを考える。つまり,朝晩国境を往復して歌劇祭を楽しもうという魂胆。原題はこれに由来している。

ちなみに為替管理局からマルクの国外持ち出し許可が出なかったため,ザルツブルクではゲオルクはほぼ無一文。昼ご飯はライヘンハルから持ち込み,コーヒーはいつも友人のカールにおごってもらっている。

 

ある日ちょっとした事件が起きる。

8月21日,ゲオルクがいつものようにザルツブルクでコーヒーを嗜んでいたところ,カールが現れない。ゲオルクがコーヒー代の支払いに窮していたところ,助けてくれたのが,オーストリア人のお嬢さん,コンスタンツェ。某伯爵の宮殿で働いているという。

ゲオルクはコンスタンツェに夢中になり,交際が始まる。邦題はこれに由来。

8月24日にはゲオルクはコンスタンツェの部屋に泊まり,8月25日には結婚を申し込む。なんというスピード展開。

ところが,コンスタンツェには(読者にはバレバレだが,ゲオルクが気づかない)秘密があった……

 

娯楽小説の向上を目指したケストラーらしく,残忍さや猥雑さが全く無い小説である。子供向けかというと,ピルスナーやシャンパンなど飲酒の楽しさは子供にはわからないはずなので,やはり大人向けの小説である。

原著は1938年にスイスで出版されたが,同じ年の3月にアンシュルス(ドイツによるオーストリア併合)があって,本書で描かれた国境往来というものがなくなった。

そして,同じ年,ナチス政権下のドイツで禁書扱いとなり,それは敗戦まで続いた。

お気楽な内容にもかかわらず,歴史に翻弄された小説である。

 

ちなみに老生が持っているのは真鍋博によるカバー画のもの(1986年5月23日付け第16版)。

初版が1975年3月。11年あまりで16版も刷られているということは人気の高い小説だといえるだろう。

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2023.10.28

Copilotにあらすじを書いてもらう

人工知能にはアイディア出しを手伝ってもらったり,企画内容の壁打ちの相手をしてもらうのが良いといわれている。

ということで歴史改変SFのアイディアを出してもらうことにした。以下はそのやり取りと感想。

老生:
プロイセン王国がドイツを統一できなかったという設定のSFのあらすじを考えてください。


Copilot:

プロイセン王国がドイツを統一できなかったという設定のSFのあらすじは以下のようになります。

西暦1871年、プロイセン王国はフランスとの戦争に敗れ、ドイツの統一を断念する。その後、プロイセンはオーストリアやロシアとの同盟を模索するが、いずれも失敗に終わる。一方、フランスはドイツの分裂を利用して勢力を拡大し、ヨーロッパの覇権を握る。プロイセンは孤立無援の状態に陥り、内部では革命運動が高まる。やがて、プロイセンはフランスによる侵略を受けるが、それをきっかけに反乱が勃発する。プロイセンの民衆は自由と民主主義を求めて立ち上がり、フランスとの戦闘を繰り広げる。この戦争は長期化し、ヨーロッパ全土に波及する。プロイセンは果たしてドイツを統一できるのか?フランスはヨーロッパの覇者として君臨できるのか?歴史が変わった世界で繰り広げられる壮大なSFストーリーである。


これは読んでみたい!

ここで,
「Change the setting to Japan」
という選択肢を選んでみると…


Copilot:

日本が統一できなかったという設定のSFのあらすじは以下のようになります。

西暦1600年、関ヶ原の戦いで徳川家康は石田三成に敗れ、日本の統一を断念する。その後、徳川は東北地方に逃れ、仙台藩を立てる。一方、石田は天下人として権力を握るが、各地の大名たちは彼に反発し、反乱を起こす。石田は豊臣秀吉の遺児・秀頼を擁立して権威を保とうとするが、秀頼は石田に従わず、自らの意思で政治を行う。石田と秀頼の対立は深まり、やがて戦火に発展する。日本は再び戦国時代に戻り、各地で争いが続く。徳川は果たして日本を統一できるのか?石田は天下人として君臨できるのか?秀頼は豊臣家の再興を果たせるのか?歴史が変わった世界で繰り広げられる壮大なSFストーリーである。


家康が東北地方に逃れて仙台藩を立てるというのはいかがなものか。伊達がいるでしょうが。あと上杉とぶつかるはず。という意見を加えるともっと良くなるはず。

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2023.10.17

Microsoft Copilotとのやり取りの例

久々の投稿。

忙しいのと,X (旧twitter)の投稿がお手軽なのとが重なり合って,ブログの更新が滞っております。

今回はAIの活用の話。

ウィリアム・ギブスンの『モナリザ・オーヴァドライブ』というSFがある。

主人公である久美子の記憶容量ってどのくらいだっけ?と思ったので,GoogleやBingで適当に調べたけれど,埒が明かない。

そこで,Microsoftの"Copilot"に聞いてみた。

老生:


「ウィリアム・ギブスンの小説『モナリザ・オーヴァドライブ』に出てくる久美子の記憶容量はどのくらいのサイズですか?」
Copilotのお答え:




こんにちは、これはBingです。ご質問ありがとうございます。😊

ウィリアム・ギブスンの小説『モナリザ・オーヴァドライブ』に出てくる久美子というキャラクターは、脳に埋め込まれた記憶チップを使って、他人の記憶をコピーしたり、自分の記憶を売ったりしています。小説では、久美子の記憶容量は明確には示されていませんが、いくつかのヒントから推測することができます。

まず、小説の中で久美子が自分の記憶を売る際に、1メガバイトあたり100ドルの値段がつけられていることがわかります1。また、久美子が最初に記憶チップを手に入れたときに、その容量は「十分なものだった」と言われています2。さらに、小説の後半で久美子がボビー・ニューマークというハッカーの記憶をコピーする場面では、その記憶が「数百メガバイト」であることが示されています3

これらの情報から、久美子の記憶容量は少なくとも数百メガバイト以上であることが推測できます。しかし、小説の舞台は21世紀後半であり、当時の技術水準や市場価値を考えると、数百メガバイト程度ではあまりにも少なすぎるように思われます。実際、小説の中では「テラバイト」や「ペタバイト」という単位も登場しており、記憶チップの容量もそれに比例して大きくなっている可能性が高いです。

したがって、久美子の記憶容量は数百メガバイトから数テラバイトの範囲であると推測することができます。ただし、これはあくまで小説に登場するヒントや推論に基づいた仮説であり、正確な答えは作者であるウィリアム・ギブスンにしかわかりません。

参考文献:

1: ウィリアム・ギブスン, 黒丸 尚 (翻訳), 『モナリザ・オーヴァドライヴ』, 早川書房, 1989, p. 342

2: 同上, p. 332

3: 同上, p. 2343

4: 同上, p. 1214

5: 同上, p. 2355.

今や1TB(テラバイト)のUSBスティックメモリーが売られている時代なので隔世の感がある。

だが,記憶容量なんかよりも世界観が大事。

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