言語マニア必読!『語学の天才まで1億光年』『ルーマニア語の小説家になった話』
自称日曜言語学者というか言語マニアとしては放置できない2冊を入手した。
高野秀行『語学の天才まで1億光年』と済東鉄腸『千葉からほどんと出ない引きこもりの俺が,ルーマニア語の小説家になった話』の2冊である。
高野氏はノンフィクション作家というか探検家としてご存知の方も多かろうと思う。今,老生の手元には『謎の独立国家ソマリランド』『西南シルクロードは密林に消える』『謎のアジア納豆―そして帰ってきた〈日本納豆〉』の3冊がある。
コロナ禍で海外旅行がままならなかった間,これらの本によって渇きを癒していた。
高野氏は世界各地,主として「辺境」っぽいところによく出かけるわけだが,そこで必要なのが語学である。もちろんコミュニケーションツールとして語学は必要なのだが,現地語を覚えることによって現地の人々からの協力も受けやすくなるという利点もある。
読んでいて面白かったのが,現地語ができるようになると,序列(身分)が低下し始めるということ。旧宗主国の言葉である英語やフランス語を使っている間は,著者は外国人として表面的であっても敬意を以って扱われていたのだが,現地語でコミュニケーションをとり,現地の人々との親交を深めると,次第にぞんざいな扱いをされるようになる,という。なるほど。
済東氏の著作は初めて目にする。ご本人にとっても初めての著書だそうだから当たり前か。
上手くいかない大学生活,失敗に終わった就活を経て引きこもり,クローン病まで患ってしまった著者が取り組んだのが,ルーマニア語。
単に学ぶだけでなくルーマニアの雑誌に掲載されるようになるのだから凄い。
老生もルーマニア語にはあこがれがあって,ミルチャ・エリアーデやエウジェニウ・コセリウの論文を言語で読みたい,という思いがあるのだが,ろくに勉強もしていないので今のところ果たせていない。
クルミの殻に閉じ込められようと,世界にアクセスする,という意思は見習うべきかも。
これはインターネットの普及によって可能となったわけであり,科学技術の恩恵ともいえる。