旧川上村の民具についての本
出張のついでに周南の古書店,マツノ書店に行ってみた。
郷土史や幕末の資料が充実していることで有名な書店だが,ここで,阿武川ダムの水底に沈んだ旧川上村+福栄村のいくつかの集落で使われていた民具についての本を入手した。
『ふるさとの民具 山口県』(山口民報社,1974年12月)と『阿武川の民俗資料』(川上村文化財愛護協会,1975年1月)の2冊で,どちらも著者は波多放彩氏。
後者『阿武川の民俗資料』の序文は「旅する巨人」宮本常一が担当している。
ちょっと昔,とある用事で阿武川民俗資料館に寄った。そのとき,そこに展示されていた民具の数々に圧倒された。
この2冊の本では同資料館に収められている民具,例えば,寝具の掻巻(かいまき)や農具の唐箕(とうみ)など90点あまりが写真付きで解説されている。独特の文体で,読んでいて楽しい。
ちなみに,書店で購入したときには気づかなかったのだが,家に帰って両方の本を見比べてみると,9割以上の民具の記事が重複していた。
『ふるさとの民具 山口県』だけに載っている民具は「藍甕(あいがめ)」「口焼(くちやき)」「筋引(すじひき)」「威(おどし)」の4点,『阿武川の民俗資料』だけに載っている民具は「渋団扇(しぶうちわ)」「とっかん」の2点である。
『ふるさとの民具』のあとがき「くくりに」の文章によれば,同書のもともとの原稿は山口民報に掲載されたものだという。『阿武川の民俗資料』は『ふるさとの民具』が出版された直後に出版されたので,原稿は同じものが流用されたのだろう。