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2022.11.23

日本のドラマ「Mother」のスペイン語版リメイク作品が大ヒットとの情報

今から12年以上前にテレビドラマ『Mother』(と 『八日目の蝉』)についてあれこれ書いたわけである:

【Mother】母性・父性ならぬ小母(おば)性・小父(おじ)性【八日目の蝉】」(2010年6月24日)

当時は芦田愛菜ちゃんがこんな大女優になるとは思いもよらなかったが,まあその話は置いといてスペイン語版リメイク作品「Mother」のお話である。

Forbs Japanの記事によると,スペインでドラマ『Mother』のリメイク作品が大ヒットしているとのことである。その前にはトルコ語版リメイクもあって,それもまた評判を呼んだとか:

日本のドラマ「Mother」のスペイン版が大ヒット。ショーランナーが語ったその理由」(by 長谷川朋子,Forbs Japan,2022年11月22日)

古くは映画『七人の侍』(→『荒野の七人』),テレビドラマ『Pure Soul〜君が僕を忘れても〜』(→映画『私の頭の中の消しゴム』)のように,日本の映画やドラマが海外でリメイクされてヒットした事例がある。今回の『Mother』もまたその列に加わることになる。

日本で名作!と思ったものが海外でも評価を受けると,何となく嬉しかったりする。

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2022.11.20

『バビロニア・ウェーブ』読了/ランドール教授の妄想/親切な定在波

どこまでが太陽系の範囲かわからないが,とりあえず太陽から数光日までの範囲は太陽系に含まれているとしよう。その太陽系平面を垂直に貫く光の柱が存在する。

光の柱は太陽から3光日のところに切り立っている。直径1200万キロ,全長5380光年というとてつもないスケールのレーザー光定在波だ。

「光が片道進むだけでも,古代バビロニア以前から出発しているわけか……」という誰かのつぶやきからこの定在波は「バビロニア・ウェーブ」と呼ばれるようになった――。

というわけで,長らく(十数年にわたって)本棚に放置していた堀晃『バビロニア・ウェーブ』をここ数日かけて読んだのだが,面白かった。何で放置していたのかね,と自問自答。

もともとは短編作品として書かれ,「SFマガジン」1977年10月号に掲載された。その後改稿して「SFアドベンチャー」1981年1月号~1983年5月号に連載,加筆修正の後,長編版『バビロニア・ウェーブ』として1988年11月に徳間書店から上梓された。そして,老生が入手したのは2007年2月に出た創元SF文庫版である。

 

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冒頭に書いたように,とにかくスケールが大きい。天体現象なのか,異星人か誰かが作ったものなのか,そもそもいつからあるのか等々,バビロニア・ウェーブには謎が多い。これらの謎を解くというのが全編を貫く主題である。良いSF作品と言うのはだいたい推理小説的である。

謎解きはバビロニア・ウェーブの発見者であるランドール教授によって行われる。そのランドール教授の妄想にも近い仮説の検証を助けるのが,宇宙空間育ちの操縦士・マキタである。

マキタは重力に対する感覚が鋭敏である。また,なぜか嗅覚も優れている。これらの優れた感覚から宇宙船や宇宙基地で怒っている出来事をよく察知している。重力や匂いの感覚に着目した描写ってSFにはあまりないのではないか?

 

◆   ◆   ◆

 

さて,このバビロニア・ウェーブのエネルギーも凄い。1平方センチメートルあたり毎秒5.3×10の11乗エルグ=530MW/m^2。太陽定数が1.37kW/m^2だから,地球が太陽から受ける単位面積当たりエネルギーの39万倍ということになる(本書では70万倍と記している)。

この定在波の中に大型の鏡を斜めに差し入れれば,人類はほぼ無尽蔵のエネルギーを手に入れることができるというわけである。この物語の中では人類はすでにそうやって定在波からのエネルギーに頼って暮らしている。バビロニア・ウェーブは人類にとても親切である。この親切設計はエネルギー供給だけに限られているわけではない,というのは物語の終わりごろに判明するが,ネタバレになるので省略。

 

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途中まで読んでいて,「人類は太陽系に閉じ込められるかもしれん」という危機感を覚えたのだが,そこで思い出したのはグレッグ・イーガン『宇宙消失』。まあそんなことにはならないのだが。

また,やはり途中まで読んでいて,「バビロニア・ウェーブは銀河スケールの情報通信回線なのでは?」と思ったのだが,そこで思い出したのは谷甲州『航空宇宙軍史 仮装巡洋艦バシリスク』所収の「星空のフロンティア」に出てくる「シャフト」である。あれは太陽系から銀河中心へと向かう空間流だったので,方角が違うが,役割は似てると言えなくもない。

 

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ICTが発達した現在からみると,各種デバイスの描写に古さを感じざるを得ないが,それでもSFの醍醐味を味わうことができる面白い作品である。さすが第20回(1989年)星雲賞受賞作。

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2022.11.18

モンゴル語の"Л (L)"の発音

モンゴルに行くことになった。

たぶん挨拶以外は使わないと思うが,モンゴル語を少しばかり学んでいる。

どの外国語を習おうともかならず難しいことに直面するのだが,モンゴル語の場合,"Л (L)"が厄介である。

英語などのLの発音を行うふりをして(舌先を上の歯茎につけたまま),舌の両端から息を出し,「シ」にも「ヒ」にも聞こえる音を発するのである。

参考:東京外国語大学言語モジュール:モンゴル語:発音:実践編

このモンゴルのLの発音については梅棹忠夫も『実戦・世界言語紀行』で「サ行のエル音」として一節を割いて語っている。

Mongolはモンゴ<す/ふ>になるわけである。

「海」という意味を持つダライ・ラマのдалай(dalai)はダ<さ/は>イになる。

言語学では「無声歯茎側面摩擦音」と呼び,国際音声字母は"ɬ"である。

ちなみにチベット語には「無声歯茎側面接近音」"l̥"と言うのがあり,エル(流音)の世界は奥深い。

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