植草甚一『カトマンズでLSDを一服』を読む
カルロス・カスタネダという名前を知ったのは,1980年代後半,藤原カムイの漫画だかエッセイだかを読んだ時のことだろうか?
カスタネダは,ヤキ・インディアンの呪術師ドン・ファンの指導の下で修業し,その経験を『ドン・ファンの教え』『分離したリアリティ』『イクストランへの旅』など一連の著作に記している。非西洋的世界観や薬草による意識の変容などに触れており,ニューエイジ運動やスピリチュアリズムに影響を与えた。
近年ではドン・ファンの実在も怪しまれているが,まあその辺の追及はここではしないことにしよう。
先日から古書店で植草甚一の著書を買って読んでいるのだが,今回は『カトマンズでLSDを一服』を紐解いている。
この本の中の初めの方にカスタネダの名とその著書の紹介記事が出てきたので,それで,冒頭に記したような記憶がよみがえったのである。
本書は,雑誌や書籍や映画を通して見えてくるヒッピー文化についてJ・J氏があれこれ述べた本である。
本書のタイトルの通り,J・J氏がカトマンズでキメてきたのかと思ったら,そうではなかった。心理学者ジェラール・ボルの『麻薬への旅』の紹介文だった。
J・J氏の文章は引用と地の文が地続きになっているので,ちゃんと読まないとJ・J氏の体験記事かと思うことがしばしばある。まあ,それが氏の文章の魅力か。J・J氏の体験だったら,ロックな爺さんだなぁと感心するところだったので,ちょっと残念だ。まあ,日本で古書を漁るのに忙しいJ・J氏がカトマンズまで出かけるわけがないか。
老生が知っているカトマンズは,むやみやたらに人と自動車が多く,野良牛もさまよい,ホコリっぽく,日射が強烈な割には高度のおかげで気温はそれほど高くない,まあ不思議な街だった。かつてはその街がヒッピーを引き付けていたんだなぁと感慨深く冒頭の文章を読んだ。
ジェラール・ボルやカスタネダの他,本書で取り上げられている話題は,映画「イージー・ライダー」やティモシー・リアリーやウーマン・リブ運動など。1970年代アメリカン・サブカルチャーにどっぷりつかることになる。
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