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2022.05.27

平成時代の本を読見直す|三品和広『経営戦略を問いなおす』

平成時代の本,三品和広『経営戦略を問いなおす』を読み直した。完全に内容を忘れていたが,読み直したら面白かった。

ゴーン容疑者を「『人を替えて,戦略を変える』名人」と称揚するあたり,隔世の感があるが,それは枝葉末節の話。

この本の中で三品先生は「戦略そのものは選べない。人を選ぶしかない」と一貫して主張している。人材至上主義。

「戦略,戦略と叫ぶ暇があれば,人選をするメカニズムにメスを入れるべきでしょう」(154頁)と,あまたある経営戦略論を一喝。なんか爽快。

戦術は科学(繰り返し使える。非属人的)であるのに対して戦略はアート(特定の状況下で一度きりしか使えない,属人的)であるという考え方。これはその通りでしょう。

そして,経営戦略は書かれたものではなく,時々刻々,変化する状況の中で経営者の頭の中に形成されるものだと主張する。これを「受動的戦略観」と三品先生は称する。ここで本書は巷の経営戦略論の本と一線を画するわけである。

経営戦略が経営者の頭の中に宿るとすれば,「戦略そのものを選ぶことはできません。そのかわり,人を選ぶことで戦略を選ぶという図式が成立します。」(140頁)ということになる。

では,人選はどうすればよいのか,ということになるが,この本によれば,リスクテイキングの経験がある人,つまり鉄火場,修羅場を潜り抜けてきた人を選ぶべしという話になる。わからなくないけど,わが国の企業の人事教育システムに反映させるのは難しいでしょうね。

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