ロバート・ムーア『トレイルズ』を読む(続)
「この本は,あちこちへと回り道をしながら,トレイルの知恵について探求してきた。それは,未知の土地を進み,目的地に到達するために必要となる知恵だ。その土地とは,海底の砂の上かもしれないし,新しい知の分野かもしれないし,ひとりの人間の人生かもしれない。この知恵はいたって人間的であり,いたって動物的であり,わたしたち個人の,そして社会の未来に大きな実りをもたらす。」(ロバート・ムーア『トレイルズ (「道」と歩くことの哲学)』(原題: "On Trails, An exploration"),361頁)
アパラチアン・トレイル,エディアカラ紀の生物が残したトレイル,アリやテンマクケムシの道,ゾウ,ヒツジ,バッファローの道,アパッチ族のインティン(道)の例え,トポジェニー,大西洋を越えてニューファンドランド,アイスランド,モロッコへと拡大するインターナショナル・アパラチアン・トレイル,ニンブルウィル・ノマドのスルーハイクと人生の道のり,寒山が登った山中の小径,……ありとあらゆる道について思索したこの本は,これ自体が思索のトレイルである。
混沌の中に放り込まれたとき,助けになるのが先人の歩んだ道,トレイルである。トレイルは外部記憶であり知恵であり秩序である。トレイルを辿ることで,人々は迷子にならないで済む。しかし,真実の半分は混沌の中にある。ときどきは混沌の中に新しいトレイルを作る必要もある。混沌と秩序の両方を愛さなくてはいけない。
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