ロバート・ムーア『トレイルズ』を読む
昨年末からロバート・ムーア『トレイルズ (「道」と歩くことの哲学)』(原題: "On Trails, An exploration")を読んでいる。
アパラチアン・トレイルを踏破する話かと思ったら,それはプロローグに過ぎない。先カンブリア時代から現在に至るまで,様々な生き物が形作ってきた道=トレイルを巡りながら,道とは何かについて思索するという,精神の旅行記だ。
「道を歩くとは世界を理解すること」(20ページ)
「道の機能とは,この(世界の)混沌を理解可能な一本の線に変えることだ」(同)
「トレイルがあれば,それがどれだけ荒れていても,人の住む領域に戻れる」(41ページ)
「トレイルとは信頼してついていくことのできる”印”のつながりだ」(ドッジ大佐,68ページ)
「あらゆるトレイルは,本質的に,最善の推測なのだ」(100ページ)
「昆虫について学んだことで,トレイルがある種の外的な記憶や集合的知性として機能しうることがわかった」(102ページ)
アパラチアン・トレイル全区間スルーハイクを起点として,「道とは何か」を探求し,古生物学,昆虫学,動物学,生態学,コンピュータサイエンス,歴史学の研究成果を辿っていく著者は,まさしく求道者。
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