高木惣吉『現代の戦争』なんぞ読んでいる
高木惣吉海軍少将の『現代の戦争』を某古書店で80円で買ったので,読んでいるところである。
この人の『太平洋海戦史』は20年以上前に別の古書店で入手していたので,並べてみた:
ちなみに左の『太平洋海戦史』は昭和24年8月31日発行の初版本であるが,多分たくさん出回っているのだろう,古書としての価値はあまり無く,100円だった。
さて『現代の戦争』の方に話を戻す。
これは,岩波書店の雑誌『世界』に連載されたものを新書としてまとめたものである。
著者はまえがきにおいて,
「われわれは平和を願うのあまりかえって侵略をまねきよせた前例をふまないためにも,現代戦争の実相,不注意に見のがすすきまから拡大してゆくその経路などを理解する必要があると思う。」
と,本書の趣旨を明確に述べているのだが,その数行後に続く
「国際社会の指導権あらそいなどにおよそ縁の遠いわれわれ民衆,とくに弱くなってしまった国民として,せめて自ら守り自ら生きるためには,ただ幼な子のように無邪気であればいいというわけにゆかないであろう。」
という一文を読むと,本書が出版された戦後間もない頃の社会経済状況に,経済面でも科学技術の面でも国際的な地位を失いつつある本邦の現状が重なり合っているように感じられ,嘆息せざるを得ない。
本書は言うまでもなく戦争についての書籍であるが,
「経験とか,教育によって,予め与えられた戦争の観念は,実際にわきおこった戦争に必ず奇襲され,たんに観念上ばかりでなく,それまでの教義とか方法までみじめにくつがえされるのが今までの習わしである。」(1ページ)
という主張は,なにも戦争に限られるものではなく,パンデミックにもDXにもあてはまりそうだと思うわけである。
職業軍人について述べた箇所
「実際家,専門家と自他ともに許す人々は前例と法規と教範を杖にいつも後向きに歩く人種である。新しい現実に即して思索し,工夫し,想像することは無批判に育成された彼らの任務ではない」(20ページ)
もまた,軍人に限られるものではないと思う。
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