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2021.08.16

カブール落つ

「カーブル」と書きたいところだが,慣例に従って「カブール」と書く。

終戦の日ということで,日本映画専門チャンネルで『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』を観ていたところ,アフガニスタン情勢が急変していた。

この映画を観る前にはガニ大統領がタジキスタンに向けて脱出した(後に「ウズベキスタンに逃げた」との報道あり),というガーディアンやアルジャジーラの報道があったのだが,観終わったときには空港での銃撃戦が始まったとの報道があった。アフガニスタンの首都カブールは事実上陥落したといっていいだろう。

15日には日本の外務省が在アフガニスタン日本国大使館職員の退去を決めたところなのだが,唯一の脱出路とも言うべき空港の状況を考えると,退去が可能なのかどうなのか怪しいところである。

老生は,数年前にアフガニスタンからの留学生(公務員)に統計学を教えたりしていたのだが,彼らは今,カブールにいると思われる。タリバンが政府職員をどのように扱うのか,これも懸念されるところである。一応,タリバンは声明の中で恩赦を与えると言っているのだが。

 

タリバンが驚異的なスピードでアフガニスタン全土を掌握していった理由として米軍の撤退が挙げられるわけだが,むしろ20年かけてもちゃんと機能する政府と軍隊が育たなかったということが根本的な理由であると思う。

腐敗政治と士気の低い軍隊。タリバンに対抗することは無理だろう。

西欧をモデルとした民主主義国家建設が不可能であることは,今から約20年前にある論文が指摘していた。:

マリナ・オッタウェイ,アナトール・リーヴェン(カーネギー国際平和財団 上級研究員)「アフガニスタン 国家再建の幻想と現実」(笹川平和財団)

必要なのは西欧型民主主義国家の建設ではなく,農業ができて安心して暮らせる環境の整備であると。これは故中村哲医師の言っていたこと(2001年10月)と同じ。

米軍撤退後,タリバンとコネクションを構築しているという中国が台頭するという話もある。しかし,英国,ソ連,米国,というようにこの地で辛酸をなめてきた大国の列にあらたな国が加わるだけである可能性は高い。

タリバンの統治方針については,日本エネルギー経済研究所 中東研究センターが声明文の日本語訳を連続ツイートしているので参考になる:

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