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2021.02.10

デモクラシーの正統性と社会経済システムの正統性

デモクラシーは過去何度も危機に晒されてきたが、ここ数年間もデモクラシーにとって危機の時代なのだろうと思う。

ということで、フアン・リンスの『民主体制の崩壊: 危機・崩壊・再均衡』とオルテガ・イ・ガセットの『大衆の反逆』を読んでいる。どちらもスペイン系。

前者は読むのがかなりしんどい本だ。ダールとかバリントン・ムーアの方が読みやすかったと思う。だが、フアン・リンスから学ぶところは多い。

フアン・リンスから学んだことの一つに、デモクラシーの正統性と社会経済システムの正統性とを分けて考える、ということがある。

デモクラシーの下にいる人々が「デモクラシーにはそれ自体としての価値がある」と思うか、あるいは「デモクラシーは特定の目的に奉仕する道具に過ぎない」と思うかによって、デモクラシーの安定性に差が生じる。

例えばいま、社会経済システムに問題が生じているとしよう。例えば、コロナ禍によって経済が打撃を受け、生活苦に見舞われている人々が増えているものの、通常の市場メカニズムや行政機関の活動では対応できていないというようなことだ。

人々がデモクラシー自体の価値・正統性を認める場合には、デモクラシーの枠組みの中で社会経済システムの改善が図られるだろう。これに対して、人々がデモクラシーを道具に過ぎないと思う場合には、デモクラシーを打倒して、別の体制の下で社会経済システムの改善を図ることになるだろう。

フアン・リンスはこう言う:

「社会的秩序の不公正に非常に憤っている政治的アクターが、しばしばデモクラシーの安定をすすんで脅かそうとするのは偶然ではない。彼らにとって、デモクラシーは社会変革より価値が低いからである。」(『民主体制の崩壊』42ページ)

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