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2020.12.03

『学術書を読む』を読む

学術書を読む』は,専門外の本を読むことを勧める本だった。

著者は専門書の出版に携わってきた京都大学学術出版会理事・編集者の鈴木哲也氏。

「専門外の学び」とは,いわゆる教養のことである。

単なる物知りになることではなく,ものの見方を学んだり,自省する力をつけるのが教養の役割。

過度の実用主義や理想主義に陥るのを防ぐためには自省,つまり自らの正当性や妥当性を疑うことが必要なのだが,そのための足場として,専門外のものの見方が必要になる。

本書ではその好例としてジリアン・テットの『サイロ・エフェクト 高度専門化社会の罠 (文春文庫)』を取り上げている。

ジリアン・テットは社会人類学の出身(イスラム教を学び,タジキスタンでフィールドワークをした経験がある)であって,経営学の出身ではない。だからこそ,メーカーや銀行などで起こる専門化の罠という経営学上もしくは組織論上の問題に取り組むことができたのだろうという。

「現代世界を席巻している「豆勘定」的な視点や手法では,個人間の相互行為の集積としての組織行動,意思決定の問題は見えてこないと思うからです。問題の根本を抉るには,問題を抱える領域の外側からの視点が有効だということを,この本は良く教えています。「専門外による自省」機能の現れでしょう。」(『学術書を読む』29ページ)

著者は「専門外の学び」の重要性を説くほか,「わかりやすさ」や「計数化」への警戒も説いている。

本来,複雑である物事を,単純に図式化したり数字に置き換えたりして,わかりやすく計りやすくすることの危険性。

それを理解し,ブレーキをかけるためにも「専門外の学び」は必要である。

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