『ファウンデーション』ドラマ化
Apple TV+で2021年から『ファウンデーション』というSFドラマが始まるということで,ちょっとした話題になっている:
「Apple TV+の期待のSFドラマ『ファウンデーション』映像初公開 #WWDC20」(GIZMODO)
『ファウンデーション』というのは『銀河帝国興亡史』としても知られるSFシリーズの第1巻で,巨匠アイザック・アシモフが書いたSF界の古典。
老生は中学生のみぎり,1984年にハヤカワから出た岡部宏之訳『ファウンデーション 銀河帝国興亡史』を読んで大いにハマった。
寝食を忘れ(食べたし寝たけど),目が潰れるぐらい読みふけった記憶がある。
近年ではコミック化されて新たな読者を捕まえつつあるようだ:
『銀河英雄伝説』のノリで表紙イラストが出ているが,戦闘シーンを期待した読者は腰を抜かすに違いない(無いから)。
で,久々に本棚から『ファウンデーション 銀河帝国興亡史』を引っ張り出して,20数年ぶりに再読してみたのだが,やはり面白い。
まず,統計学をベースとして未来予測を可能とする学問,心理歴史学というのが面白い。
だが,使いこなせるのは創始者のハリ・セルダンほか僅かな人々だけである。未来がわかる人が増えると,未来が変わってしまうから,心理歴史学の予測は極秘事項である。
ただし,
- 銀河帝国が滅亡すること,
- それをそのまま放置すると3万年にもおよぶ暗黒時代が訪れること,
- そして,ファウンデーションという組織をつくることで暗黒時代を1000年に縮めることができること,
この3つだけはファウンデーションの人々や本書の読者には知らされている。
はたしてハリ・セルダンの予言はどのように成就されるのか,それが読者の興味をそそるわけである。
つぎに,重要な部分は対話によって進んでいくこと。これも面白い。
アシモフの短編推理小説シリーズ『黒後家蜘蛛の会』を読んでも感じるのだが,基本的に,アシモフは対話劇の名手だと思う。
もちろん帝都トランター初めとする各惑星や各種ガジェットもしっかり描写されているのだが,会話の内容,言葉の選び方に最も力がそそがれていると思う。
繰り返しになるが戦闘シーンは無い。心理戦,頭脳戦で,ファウンデーション,そして銀河の運命が変わっていく。
「銀河帝国興亡史」については,『ファウンデーション』を購入する前から,厚木淳訳『銀河帝国の興亡 1』 (創元推理文庫)が気になっていたのだが,なかなか手を出せないままだった。
1984年に岡部宏之訳のシリーズが早川から出て,購入を決めたわけである。
購入の決め手は鶴田一郎が書いた宇宙船の表紙(↓)だった。つまり,昨今の新しい読者と同じで,老生も派手な戦闘シーンを期待して手を出したのだった。そして読んでみて良い意味で裏切られたわけである。
↑1984年にハヤカワから立て続けに出版されたファウンデーションシリーズ。鶴田一郎氏はノエビアのCMなどでおなじみの美人画の第一人者だが,かつてはSFマガジンの表紙画などを担当していたのである。
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