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2020.08.11

ブローティガン『西瓜糖の日々』を読む

夕方。ツマが買ってきた糖度12%のスイカを食べてたところ,突如,天啓のようなものがあって,書棚で何年間も眠っていたリチャード・ブローティガン『西瓜糖の日々』(藤本和子訳,河出文庫)を読もうという気になった。

アイデス<iDEATH>というコミュニティで穏やかに暮らす人々。静謐なエピソードが多くを占めるが,時として流血の惨事や悲惨な死が描かれる。

これは文明崩壊後の世界なのだろうか? あらゆる素材になり,食物になり,燃料にもなる西瓜糖とはいったい何の象徴だろうか? そして虎たちとははいったい何者だったのだろう?

 

実はこの小説,十数年前に一度読んで途中で挫折した。それが,今読んでみると文章がすんなりと頭に入ってくる。この小説を読むのに相応しい年ごろになったのだろう。歳を取るのは悪いことばかりではない。

この小説で好きなところは,墓の描写だ。

この世界では死者は川底の透明な棺に納められる。棺には狐火が入れられるため,夜になると川底の墓は光を放つ。そして川に住む鱒たちは光る墓の周りを興味深げに回遊する……。

なんとも美しい光景だ。

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