『真夜中の子供たち』読了
だいぶ時間がかかったが,サルマン・ラシュディの『真夜中の子供たち』を読了した。
インド独立の真夜中に生まれたサリーム・シナイ。
物語が終盤に差し掛かった時,インドの双子ともいえるこの男の前に立ちはだかったのは,もう一組のインドの双子とも言うべき女性,インディラ・ガンディーだった。
ネルー・ガンディー王朝を徹底的に皮肉っているがゆえに,ラシュディはインドを離れざるを得なくなったという問題作でもある。
合計1000頁を超える長編であり,いったいどうやって結末に至るのか心配だったが,それは杞憂に終わった。
これまでに登場した懐かしい人々が顔を出す賑やかな祝祭の空気の中で生涯を閉じる,というサリームの空想で幕が下りる。
後にブッカー賞を取る作品だけあって,うまい終わり方だ。黒澤明『夢』最終話「水車のある村」を思い出した。
サルマン・ラシュディによる「作者自序」の一文がこの作品の味わいを端的に表現している:
「喜劇的なまでに自己主張が強く,性懲りもなく多弁なものが出来上がったが,語り手のしだいに悲劇的になっていく大見得のなかに,募りゆくペーソスが生まれていると感じていただけたらありがたいと思う。」(下巻519頁)
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