『真夜中の子供たち』下巻を読む
先月の下旬に買ってきたサルマン・ラシュディの『真夜中の子供たち(下) 』を読んでいるところである。
主人公サリーム・シナイの個人史(厳密には祖父の代から話が始まるので家族史だが)とインド現代史とを重ね合わせた物語である。
こういう個人史と現代史とを重ね合わせた作品を老生は勝手に「フォレスト・ガンプ型物語」と呼んでいる。映画「どつかれてアンダルシア(仮)」も小説『フランス的人生』もその類。この間読んだバルガス・リョサ『ラ・カテドラルでの対話』はちょっと違う。どう違うかは説明し難いが。
下巻に入り、シナイ家でのサリームの地位低下が始まる。
1962年の中印国境紛争におけるインドの敗北とサリームのテレパシー能力の喪失とが同時進行で描かれているのが面白い。こういうところが「フォレスト・ガンプ型」だというわけである。
この小説を楽しむためにはインド現代史ならびにインドの日常生活に関する知識があるに越したことはないのだが、同時にイスラームに関する知識もあった方がいい。
例えば下巻162ページには様々なアラブの氏族やプレ・イスラーム時代の人物の名が出てくるのだが、Wikipedia日本語版では見つからない。例えば、バヌー・ハニファ(Banu Hanifa)だとかバヌー・アブス(Banu ‘Abs)だとかカリド・イブン・シナン(Khalid bin Sinan)だとか。英語版だと見つかる。それにしてもイスラームに関する知識不足を痛感。
文中に注釈があっても良いと思うのだが、訳者の手には余るのかもしれない。
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