ハマスホイ見てきた|今世紀ラストチャンス?
コロナ禍のせいでなかなか見られなかった「ハマスホイとデンマーク絵画」展。ようやく見ることができた。
日本で見られるのは今世紀最後?と勝手に思いながら(2008年にも開催され,喝さいを浴びたというが),気合を入れて山口県立美術館に出陣。
先日の記事で書いたように,図録はすでに入手しているので一応予習はできている。
緊急事態宣言解除とはいえ,厳戒態勢。人数制限,時間制限がある。
県境をまたいだ移動が許されない今,山口県民のみが鑑賞できるという贅沢。
整理券をもらい,サーモグラフィでのチェックを経,ソーシャルディスタンスを保ちながら入館を待つ。
入館後は,デンマーク絵画の黄金期(19世紀前半),スケーイン派,国際化と室内画の興隆,というようにデンマーク絵画の歴史をたどりながら,おまちかねのヴィルヘルム・ハマスホイの作品群に到達する。
スケーイン派のことだが,シュレスヴィヒ・ホルシュタイン戦争はデンマークのナショナリズムを高め,漁師町スケーインにおけるデンマークの田舎の生活の発見に至る。ミケール・アンガ『ボートを漕ぎ出す漁師たち』,オスカル・ビュルク『遭難信号』はレーピンの歴史画を見るような緊張感のある作品だった。ちなみにスケーインの綴りは"skagen"で,あのデンマークの腕時計,スカーゲンとはこのことか?スケーインの風景って日本海側の漁村を思わせ,非常に親しみが湧く。
国際化と室内画の興隆の時代に至ると,ユーリウス・ポウルスンとかヴィゴ・ヨハンスンとかピーダ・イルステズとかカール・ホルスーウとかデンマーク絵画の歴史とハマスホイの作品群とをつなぐ作家たちが綺羅星のように登場する。
とくにピーダ・イルステズとカール・ホルスーウはハマスホイと親交を結んでいて相互の影響が感じられる。
ちなみに老生はユーリウス・ポウルスンの『夕暮れ』に感銘を受けていて,ハマスホイ『若いブナの森,フレズレクスヴェアク』(下の絵葉書,右上)と同じ美意識を感じる。
おまちかねのハマスホイ。ハマスホイはもともとは風景画で高い評価を受けていたという。後々,「北欧のフェルメール」とも称され,室内画が高く評価されるわけだが,北欧らしい空の色,光,空気感に満ちた風景画もおさおさ劣るものではない。というわけで,風景画のポストカードばかり購入した。
ハマスホイ作品では本展の目玉ともいえる『背を向けた女性のいる室内』や『室内』が有名だが,全く人のいない室内画もなかなかのもの。ハマスホイの描く部屋には生活の記憶が降り積もっていて,無人にして無人ではないという不思議な感覚がある。
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