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2020.05.06

バルガス=リョサ『ラ・カテドラルでの対話』を読む(続)

バルガス=リョサ作,旦敬介訳『ラ・カテドラルでの対話』(岩波文庫)の第1部を読み終えて第2部に入っているところである。全体の3分の1を超えた段階。

登場人物が多いうえに,錯綜する時系列,自由間接話法など技巧を凝らしているため,読んでいて頭が混乱する。しかしめげずに400頁ほど読み進めると,人間関係や物語の構造が見えてきて面白さが増す。あと,第2部からは文体が変わってだいぶ読みやすくなる。

 

読んでいて混乱するとは言ったものの,サンティアーゴとアンブローシオの二人に加え,

  • サンティアーゴの父,ドン・フェルミン,
  • 治安当局トップ,カヨ・ベルムーデス,
  • ベルムーデスの愛人,オルテンシア(ムーサ),
  • オルテンシアの使用人,アマーリア,

これら四人の言動を捉えておけば迷子になることはない。

以下,各人についてのメモ:

サンティアーゴ・サバラ(サバリータ) Santiago Zavala (Zavalita)
本小説の主人公。サバラ家のお坊ちゃん。サン・マルコス大に入学するが,学生運動で挫折。現在は「ラ・クロニカ」紙の記者。

アンブローシオ Ambrosio
安酒場「ラ・カテドラル」でのサンティアーゴの話し相手。サバラ家のお抱え運転手だった。ベルムーデスと同じチンチャ出身で,ベルムーデスの運転手兼手下だったことも。サバラ家ではアマーリアと恋仲だった。

ドン・フェルミン Don Fermin Zavala
オドリア政権の実力者。妻・ソイラ夫人との間に,チスパス,サンティアーゴ,テテの3人の子供がいる。政権幹部とともにベルムーデスを除こうとするがベルムーデスに先手を打たれ失敗。

カヨ・ベルムーデス Cayo Bermudez
チンチャ出身。田舎でくすぶっていたところ,同郷の友人,セラーノことエスピーナ大佐に誘われ,オドリア政権の治安当局に。瞬く間に実権を握ることになる。短躯で貧相だが陰謀には長ける。

オルテンシア(ムーサ) Hortensia (La Musa)
元はクラブ「エンバシー」のホステス。ベルムーデスの愛人となる。同性愛者。

アマーリア Amalia
サバラ家の使用人,製薬工場の瓶詰係を経て,オルテンシアの使用人に。サバラ家ではアンブローシオと,製薬工場勤務時には,トリニダーと付き合っていた。トリニダーはアプラ党の運動家だったが,治安当局の取り調べで廃人に。

……というように誰もかれもが一癖も二癖もある。このほかにも濃い人物ばかり登場する。この小説の魅力の一つだろう。

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