バルガス=リョサ『ラ・カテドラルでの対話』を読む(続々)
オドリア独裁体制崩壊後のリマで起こった殺人事件。殺された「夜の蝶」オルテンシアは,かつての内務大臣の愛人だった。事件を追う記者サンティアーゴは,父と運転手のアンブローシオが殺害に関わっていたとの情報を得て驚愕する……。事件の真相は? 多様な民族と階級で構成された複雑なペルー社会を舞台に展開されるポリティカル・サスペンス――
バルガス=リョサ『ラ・カテドラルでの対話』の第3部第I章を要約するとハヤカワ・ミステリ文庫か創元推理文庫の一冊みたいになる。
だが,『ラ・カテドラルでの対話』がそれだけで構成されているわけではないことはご承知の通り。「夜の蝶」殺人事件が軸の一つであることには間違いないが,良家のお坊ちゃんサンティアーゴがやさぐれた新聞記者になっていく過程,アンブローシオの知らざれる過去,栄華を極めたオルテンシアの零落,内務大臣カヨ・ベルムーデスの立身出世と突然の失脚・亡命,等々,登場人物たちの濃厚なエピソードが絡まり合って,大伽藍のようになっているのが,この『ラ・カテドラルでの対話』である。
いま,下巻第4部まで読み進めたところだが,果たしてどのような終末を迎えるのか楽しみだ。
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