癌と戦争
スーザン・ソンタグ『隠喩としての病』が指摘するところによれば、癌は異星人、侵略者のイメージをまとっており、癌治療は戦争を思わせる比喩で語られる。
「癌との戦い」という言い方は普通にあるし、化学療法や放射線療法というABC兵器を思わせる治療法によって癌は攻撃されたり爆撃されたりする。
逆に社会現象が癌の比喩をもって語られることも多い。「社会の癌」「組織の癌」という表現があった場合、「癌」とみなされた人や物は、理解できない、許されざる、そして気を緩めたら社会や組織を蝕み続けるに違いない存在として扱われる。
つまり、癌は比喩として使われるたびにそのイメージを強化し、それがまた比喩として使われるのを促すという正のフィードバックが働いている。
このような癌の比喩は、おそらく癌の発生メカニズムが明確になり、その確実な治療法が確立され次第、消えてゆくのだろうが。
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