猫のエネルギー要求量
ネコの生理学的なデータを集めているところだが,今度は代謝量について。
食餌(エサ)の中に含まれているエネルギーを総エネルギー(GE)と言う。食餌中の炭水化物,脂肪,タンパク質が有するエネルギーはそれぞれ:
- 炭水化物 4.15kcal/g
- 脂肪 9.40kcal/g
- タンパク質(実質) 4.4kcal/g
である。
タンパク質そのものが持つエネルギーは5.65kcal/gだが,体内で尿素生成のためエネルギーを消費するので実質的には4.4kcal/gとなる。
総エネルギー(GE)すべてをネコが吸収できるわけではなく,未消化の分が糞として排出される。消化された分を可消化エネルギー(DE)という。
可消化エネルギーも全て代謝に使われるわけではなく,尿としてエネルギーの一部が体外に排出される。尿中のエネルギーを差し引いた分を代謝エネルギー(ME)という。
この代謝エネルギー(ME)がネコの体内で利用され,熱や運動の形で外界に放出されるわけである。食餌(エサ)というのは,未消化分とか尿になる分とか,様々なロスがあることを見込んだうえで,ネコの代謝エネルギーを補充するために毎日与えなくてはいけない。
ロスを見込むために,消化率という考え方がある。総エネルギー(GE)に消化率を掛けると代謝エネルギー(ME)になるというものである。坂根(2001)によれば,炭水化物,脂肪,タンパク質の消化率はそれぞれ,0.84,0.9,0.8なので,
- 炭水化物 4.15×084=3.49kcal/g
- 脂肪 9.40×0.9=8.46kcal/g
- タンパク質(実質) 4.4×0.8=3.52kcal/g
が代謝エネルギー(ME)となる。
さて,ではネコの代謝(メタボリズム)を維持するためにはどの程度のエネルギーが必要か?
当然,ネコの体重に対応してエネルギーの要求量が決まるのだが,坂根(2001)の解説記事を踏まえると次のような簡便な式でエネルギー要求量が計算できる:
- BER(基礎エネルギー要求量)=50×体重(kg) [kcal/day]
- MER(維持エネルギー要求量,若い成熟ネコの場合)=65×体重(kg) [kcal/day]
- MER(成熟ネコの場合)=60~80×体重(kg) [kcal/day]
- MER(非活動的なネコの場合)=60×体重(kg) [kcal/day]
ここで,BERとMERという2つの言葉が出てきたが,前者BERはネコが適温で安静にしているときに消費するエネルギーであり,後者MERはそれプラス食事行動や自発的な運動をする場合の消費エネルギーである。
成熟ネコの場合,MERはBERの1.2~1.6倍となる。イヌの場合はMERはBERの約2倍と言われている。イヌとネコの違いは,運動量の違いに由来する。
体重が3.0kgの非活動的なネコであれば,60×3.0=180kcal/dayのMERを満たすように,炭水化物・脂肪・タンパク質を組み合わせた食餌を与えなくてはならない。
【参考文献】
坂根弘, 2001, 犬・猫のエネルギー要求量, ペット栄養学会誌, Vol.4, No.2, pp.88 - 97
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