『台湾,街かどの人形劇』を観る
『台湾、街かどの人形劇』(原題『紅盒子 father』)を観てきた。
布袋戯(ポーテーヒ)という人形劇の巨匠、陳錫煌(ダン・シックホン)の技芸と家族関係を10年に渡って追いかけたドキュメンタリー。
陳錫煌の父・李天禄もまた、布袋戯の巨匠であった。そのため、陳錫煌は、80歳を過ぎても李天禄の息子として紹介されることが多々ある。また、ある事情により、父の姓ではなく母の姓を継ぐことになり、さらに父の劇団を継ぐこともできなかった。芸を極めた巨匠にも果たせなかったことはある。しかし巨匠・陳錫煌はそれを嘆くことなく、技芸の守り神・田都元帥に見守られながら、ひたすら技芸に精進する毎日を送る。
それにしても手の動きには圧倒される。陳錫煌は人形を外した状態で、手の細かな動きを披露する。本来なら秘密なのだろうが、布袋戯が滅びつつある状況を前に、巨匠はできる限りこの技芸を伝えようと努めるのだ。
巨匠の手にかかると人形たちはまるで生きているかのようにタバコを吸い、頭を掻き、書を認め、剣を振るう。
映画の末尾で陳錫煌と弟子たちによる布袋戯がまるまる一話分披露される。見ているうちに人形を操る人間たちの姿は見えなくなり、生き生きとした人形たちの演技のみが見えてくる。時代の流れとはいえ、このような素晴らしい技芸が消滅していくのは残念だ。
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