平出隆『猫の客』を読む
誰かが手に取って,そのまま置き忘れたのだろうか?
文春文庫が平積みされているところに,なぜかこの河出文庫の本が置き去りにされていた。
……平出隆『猫の客』。
もともとのカバーの上にフジタの猫の絵(「クチュリエの猫」)のカバーが被せられた文庫本。フジタの猫に魅かれて手に取った。
即購入して,一気に読んだ。
1989年,昭和の終わり。文筆業を営む夫婦のもとに隣家の猫「チビ」が遊びに来るようになる。著者はとくに猫が好きということでもなかったのだが,毎日のように猫の客を迎えるうちに,チビの視点からものを考え,チビにまつわるエッセイを季刊雑誌に掲載するほどになる。しかし,1990年の3月,チビとの別れは突然やってくる……。
つい先日,愛猫おこまを亡くした小生の心にいたく浸み込む小説だった。
とくに次の一文は良くわかった:
「死体を封じた場所に立ちたいという心理は,そもそもどのようなものだろうか。もう失われてしまったそれが,かけがえのない貴いものであった,と確かめ,その者とこれから,別の次元の通路でつながっていたい心理である。」(103~104頁)
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