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2020.01.24

矢口高雄『おらが村』を読む

矢口高雄先生の『おらが村』がヤマケイ文庫に入っていたので,買ってきた。

昭和40~50年代の秋田の山村に住む高山一家の生活を描いた作品である。

1973年10月から1975年3月まで「週刊漫画アクション」に連載されていた作品だが,矢口先生による精細な描写は全く古さを感じさせない。これが初期の作品だというから,その画力たるや大変なものである。目次ページのフクジュソウのイラストなんか,写真と見まがうぐらいである。

この作品,(矢口先生のことだから)当然のことながら,風雪,動植物など,自然の描写がしっかりしている。そのうえで,畑仕事,猟,出稼ぎ,雪かき,囲炉裏を囲んだ食事,屋外のトイレの便器に敷き詰められた杉の葉,一日遅れで配達される新聞など,昭和の山村の日常生活が丹念に描かれている。老生が幼いころ,父の実家で過ごしたときのことを思い出した。あそこは雪の降らない地方だったし,すでに囲炉裏はなかったが。

とにかく,この作品は一つの完成したドラマであるとともに,重要な昭和時代の記録である。昭和時代,みんながみんな経済成長の波に乗っていたわけではない。都市生活の記録ばかりが残りそうだが,同時代の農村の記録も忘れてはいけない。都会にいる人も多くは農村とのつながりを持っていた。

 

なお,矢口高雄先生は今年で画業50周年を迎えられるそうである。これからもお健やかに:

 

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