岩波文庫的『月の満ち欠け』読了
「不運だった過去の彼女たちのためにも。いいえ,そうじゃなくて,不運だった過去のあたしたちのために。いまこのあたしがやるべきことをやる。これはあたしただひとりの願いではなく,彼女たち,不幸だった死者の願いでもあるんだ。もしからしたら彼女たちにとどまらず,もっと遥かな昔から,数々の死者からバトンの受け渡しでつながっている宿願かもしれないんだ。」(本書393頁)
佐藤正午の岩波文庫的 『月の満ち欠け』を読み終わった。
30年にもわたって転生し続ける女性の一途な愛,と書くと陳腐な表現になる。ホラーの要素あり,ミステリー要素あり。福田恒存が『オイディプス王』 について,優れた作品は推理小説的要素があると言っていたことを思い出す。
巻末の特別寄稿で伊坂幸太郎が言うように佐藤正午は「小説というマシンの持つ能力を,フルに使える作家」だと思う。
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