タンザニア人も頑張る
小川さやか『チョンキンマンションのボスは知っている: アングラ経済の人類学』という本を読んでいるのだが,香港でタンザニア人たちが頑張っている。というか頑張っていなかったりする。
一攫千金を夢見て香港に集まるタンザニア人たち。彼らの根城の一つが香港の弥敦道(Nathan Road)に立つチョンキンマンション(重慶大厦)である。
スワヒリ語に長けた著者は,チョンキンマンションのボス・カラマを中心とするタンザニア人ブローカーたちに密着取材を試み,彼らの経済活動の実態を徐々に明らかにしていく。
…と書くとものすごくシリアスな感じだが,タイトルからも伝わってくるように,わりと肩の力の抜けた楽しい本である。
香港のタンザニア人たちが,昨日触れた在日福建人たちのように猛烈に働いているかと言うと全くそうではない。約束は良く忘れるし,時間にもルーズ。だが,最終的には割とうまいこと商売を成功させている。その基盤となっているのが,「開かれた互酬性」というアフリカならではのシステムである。
「開かれた互酬性」とは「他者の『事情』に踏み込まず,メンバー相互の厳密な互酬性や義務と責任を問わず,無数に増殖拡大するネットワーク内の人々がそれぞれの『ついで』にできることをする」(本書87ページ)仕組みのことである。信頼が欠如しているところでこそ成立するという面白い仕組みである。
「開かれた互酬性」と関係あるのが、対等という観念。タンザニア人たちは中国人やパキスタン人相手に常に対等であろうとする。時間を守らないで「取引相手が自分を恋しくなった頃に会いに行く」のは相手の下につかないためのテクニックなのである。
アフリカの知恵には学ぶところがある。
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