『ジョーカー』見てきた
ホアキン・フェニックスがついに成し遂げた。
さすが,いま最も引っ張りだこの俳優。
稀代の悪党,ジョーカーの誕生のプロセスが綿密にすごい迫力で描かれている。
ここでは,バットマン=ブルース・ウェインの幼少期の悲劇は添え物でしかない。
脳神経に障害を負い,母の介護に追われながらも,ピエロ,そしてコメディアンとして人々を笑わせることを目指していた男・アーサーは,人々の嘲笑,裏切り,無関心の中で,ついに世界を震撼させる悪へと変貌する。
ホアキン・フェニックスの狂気の演技からは一瞬たりとも目が離せない。
最愛の母を殺し,職場の仲間を殺し,敬愛していたTVショーの司会者を殺し,蝟集する暴徒から喝さいを浴びながらついに悪のカリスマとして自己を確立するに至ったアーサー=ジョーカーには,憎悪よりもむしろカタルシスを感じてしまうから困ったものだ。
映画「ジョーカー」の公開時,ニューヨーク市警察が映画館に私服警察官を配置するなど警戒態勢を強化していたこともよく理解できる。
長らく怒れる人々の被り物と言えばガイ・フォークスのマスク(映画『Vフォー・ヴェンデッタ』で有名)だったが,これからはジョーカーのメイクが象徴となるかもしれない。
ところで。
アーサーが憧れていたTVショーの司会者,マレー・フランクリンを演じていたのはロバート・デ・ニーロ。
アーサーは劇中で何度か指鉄砲で頭を打ちぬくまねをするのだが,これは,デニーロの「タクシードライバー」に対するオマージュだろう。
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コメント
幸福な時代であったなら、この映画そのものがジョーカーの悪ふざけ、偽私小説のごときものなのだという解釈が頭をよぎったかもしれません。そうではなく、圧倒的なリアリティをもって見る者の心に食い込んでくるのは、やはり今の時代を正しく映し出しているからなのだろうな…と感じました。ヘビーな作品でしたね。
ところで!
『ジョーカー』の評判如何にと思ってSNSを見てたら「おしんの苦労を思い出してジョーカーもがんばれ」「おしんにくらべれば甘い。ジョーカーは甘え」という話題が飛び込んできて、あれと比べたらそうなるわと笑ってしまいました。
投稿: 拾伍谷 | 2019.11.07 03:26