YCAM爆音映画祭2019|夏の終わりの至福の時間
この日曜日,YCAMで開催されている爆音映画祭2019に行ってきた。
連日,通い詰めた猛者もいると思うが,老生は控えめに,『バジュランギおじさんと,小さな迷子』(制作・脚本・監督:カビール・カーン,制作・主演:サルマン・カーン)と4Kデジタルリマスター版『ディア・ハンター』のみを見た。
いずれの映画も上映前にboid主宰の樋口(泰人)さんによる前説がある。YCAMのスタジオAの音響設備は日本最高クラスとのお言葉。
そのお墨付きの音響設備を駆使して,歌あり踊りありのインド映画を爆音で鑑賞できるのだから,贅沢なことである。ということで,『バジュランギおじさんと,小さな迷子』の話。
シャーヒダー(ハルシャーリー・マルホートラ)はパキスタンの山村(多分,カシミール)に住む6歳の女の子。心因性だと思うが,声が出せない。そこで,お母さんに連れられて国境を越え,インド領内にある,聖者ニザームッディーンの廟にお参りに行く。その帰り,停車中の国際列車から降りてしまってインド国内で迷子になる。そんなシャヒーダーを保護したのは熱烈なハヌマーン信者で正直者の青年パワン,通称バジュランギだった。やがて,保護したシャヒーダーがパキスタンからの迷子だとわかり,パワンはこの子を両親のもとに送り届けようと決意する…。
シャヒーダーがパワンを初めて見かけるのは,ハヌマーンの祭典。そこでインド映画らしく,歌と踊りが繰り広げられる。YCAMのサウンドシステムが本領を発揮。
ほかにもパキスタンにたどり着いたシャヒーダーとパワンが廟参りをするシーンでは,スーフィー歌謡カウワーリーが高らかに歌い上げられるのだが,ここでもやはりYCAMのサウンドシステムがその威力を。
全体的に明るくコミカルな映画だが,バジュランギおじさんことパワンの正直さと善意,そしてシャヒーダーの健気さが感情を揺さぶり,抜群の音響効果も相俟って,涙を誘う。周辺からもすすり泣きが聞こえる。
パワンとシャヒーダーに同行するパキスタンのジャーナリスト,チャンド・ナワーブ(ナワーズッディーン・シッディーキー)の「マスコミは憎しみには飛びつくが,愛には報道する価値がないと言う」という批判は青臭いがごもっとも。本作は2015年の作品だが,カシミール問題が先鋭化している現在こそ,そして某国と某国の関係が最悪になっている現在こそ見る価値があると思う。
昨年この爆音映画祭で見た『バーフバリ』もしかり,娯楽性とメッセージ性とを備えた近年のインド映画のレベルの高さには圧倒される。
ということで,『ディア・ハンター』の話は別記事で。
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