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2019.08.13

それであなたがたは主の恵みのどれを嘘というのか?

この猛暑の中,以前読んだ(参考)中田考『イスラーム入門 文明の共存を考えるための99の扉』 (集英社新書)や,阿刀田高『コーランを知っていますか』(新潮文庫)を再読しつつ,さらに日本ムスリム情報事務所「聖クルアーン日本語訳」を参照したりしている。

クルアーン(通称:コーラン)はその名の通り,本来アラビア語で朗唱するべきであって,翻訳は解釈(タフスィール)にすぎない。だが,(ペルシャ語を学んだことがあっても)アラビア語を学んだことのない老生にとって,クルアーンに近づくための手段としては,日本語訳を読むしかない。

クルアーン各章のうち,「慈悲あまねく御方」章は特筆すべき特徴を持つ章であって,「それであなたがたは主の恵みのどれを嘘というのか」というフレーズが随所に効果的に現れ,詩的な効果を生んでいる。

阿刀田高は言う:

「さながら交響曲の楽章のあいまに響くモチーフのように,初めはこのフレーズがさりげなく入り,頻度を増し,最後は一フレーズおきにこれが繰り返される。<中略> このリフレインが詩的な修辞法であることは明白だ。」(『コーランを知っていますか』108ページ)

まさしく「誦(よ)め」(「凝血」章)とアッラーが命じたように,本来は声に出して,その言葉の効果を体感するべきものなのだろう。アラビア語で体感できないことが悔やまれる。

慈悲あまねく御方」章には緑滴り,泉湧き出で,種々の果物みのる楽園が描かれているのだが,その有難さを想像するには今の猛暑の中が相応しい。

 

◆   ◆   ◆

 

ちなみに,であるが,この「慈悲あまねく御方」章には

「かれは2つの海を一緒に合流させられる。(だが)両者の間には,(アッラーの配慮によって)障壁があり一方が他方を制圧することはない」(日本ムスリム情報事務所「聖クルアーン日本語訳)

という一節がある。『人類はどこへ行くのか』(講談社学術文庫)の第3章「人類にとって海はなんであったか」(応地利明)によれば,「2つの海」とはインド洋と地中海,「障壁」とは西アジアのことだという。

だが,「2つの海」に関して「両方は真珠とサンゴを産する」という一節があることから,老生などは「2つの海」とはペルシャ湾と紅海のことで,「障壁」とはアラビア半島のことなのではないかと思っている。

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