ラオス秘密戦争
先日から米空軍少佐レジナルド・ハソーン(Reginald Hathorn)が書いた "Here There are Tigers: The Secret Air War in Laos and North Vietnam, 1968-69" (Stackpole Military History Series)を読んでいる。
ラオス領内に整備されたホーチミン・ルート(Ho Chi Minh trail)を叩き潰すための非公式な戦い,通称「ラオス秘密戦争」を描いた戦記である。
著者はセスナO-2スカイマスター(通称Oscar Deuce)を駆ってFAC(Forward air controller; 前線航空管制官)として作戦に従事した。
戦いは過酷である。3人に1人が命を落とすといわれている。FACは索敵と攻撃位置の指定を任務としているため,低空で低速で飛行せざるを得ず,地上にいるパテトラオやベトナム軍兵士にとっては格好の標的となる。著者の搭乗機もしばしば銃撃を受けている。著者の同僚の中には戦死した者もいる。
他の米軍機も無事ではいられない。低空で攻撃中に撃墜されることがある。パイロットが墜落する機体から脱出に成功しても,今度は地上で殺される可能性がある。本書第10章ではクリスマスイブに撃墜されたF-105のパイロットを救出する作戦が描かれているが,悲惨な結末を迎える。
これはあくまでも秘密の戦争である。著者が従事した作戦のいくつかは"The mission that never was"として存在すら否定される。戦死しても「ラオスで戦死した」などとは記録されない。"lost in hostile action in the extreme western DMZ"つまり「非武装地帯の遥か西で起こった敵対行為により死没」と記録されるだけである。
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