海上花列伝|第四十六回から第五十回のあらすじ
引き続き,太田辰夫訳『海上花列伝』(平凡社 中国古典文学大系 49,1969年)の第四十六回から第五十回のあらすじをメモしておく。
第四十六回
児嬉(遊戯)を逐(お)い 乍(たちま)ち新伴侶と聯(むす)び
公祭に陪(したが)い 重(かさね)て旧門庭を睹(み)る
尹痴鴛が張秀英に気があるのを知って,林翠芬は面白くない。翠芬は一笠園の一角に設けられた築山に向かう。するとそこに朱淑人と周双玉がいて,コオロギを戦わせて遊んでいた。翠芬は足がもげたコオロギ『蟹殻青』を淑人から譲り受ける。
翌日,一笠園にいた一行は斉韻叟に率いられて李漱芳の追悼式へと向かう。
第四十七回
陳小雲 運 貴人に遇い亨(とお)る
呉雪香 祥(きざし) 男子を占い吉なり
斉韻叟と蘇冠香,高亜白と姚文君,尹痴鴛と張秀英(と林翠芬),朱藹人と林素芬,朱淑人と周双玉,陶雲甫と覃麗娟,陶玉甫と李浣芳,名士と芸者たちはそれぞれ故李漱芳の追悼を行う。
漱芳の葬儀を取り仕切っている陳小雲は斉韻叟と知己となり,中秋節(八月十五日)に一笠園で開かれる宴席に招待される。
旧漱芳宅を後にした陶雲甫は,葛仲英の招きで呉雪香宅を訪ねる。そこには羅子富,王蓮生,洪善卿らがいた。雪香が仲英の子を身ごもったので,祝いに来ていたのである。祝宴となり,羅子富は黄翠鳳とその妹分・黄金鳳を呼び寄せる。
散会後,子富と蓮生は翠鳳・金鳳とともに尚仁里の翠鳳宅に向かう。
第四十八回
誤(まぐれ)の中の誤 侯門 海よりも深く
欺(あざむ)き復(ま)た欺く 市(あきない)の道 雲よりも薄し
黄翠鳳が上機嫌なので,羅子富がわけを尋ねると,翠鳳の落籍が決まったとのこと。しかし,何千ドルもの支度金がかかるということで,子富は頭を抱える。
中秋節になり,陳小雲が斉韻叟邸を訪ねると,そこには荘レイ甫という男がいた。レイ甫は豪華な屏風を斉韻叟に売って大もうけをしていたのである。
第四十九回
明(うわべ)は棄てて暗(ひそか)に取り蒙贓(へそくり)を攘竊(さら)い
外に親しみ 内を疏んじ 挾質(かっさらい)を図謀(はか)る
黄翠鳳がついに独立する。翠鳳は羅子富の前で女将の黄二姐に引き渡す衣装・装飾品類のリストを読み上げ,また証人を立てて身請けの証文を作成させる。そして兆富里に借りた新居に引っ越す。子富は翠鳳の手際の良さに関心する。
第五十回
軟(やんわり)と廝纏(からみつ)き 意有って訛頭(いいがかり)を捉え
悪(あくど)く打岔(くちだし)し 端(いわれ)無く 毒手を嘗(な)む
兆貴里の芸者,孫素蘭宅に乱暴者の頼公子が取り巻きを連れて現れ大暴れ。頼公子の前では気丈に振る舞う素蘭だったが,実際は不安と悲しみでいっぱい。密かに斉韻叟の庇護を求めようと考える。
そのころ,老旗昌では高亜白,葛仲英ら名士たちと彼らの馴染みの芸者たちが集まり,尹痴鴛が作ったという名文の疲労を心待ちにしていた。
ということで,黄翠鳳は羅子富の金で独立を果たす。第四十四回に登場した乱暴者の頼公子がここでも大暴れ。風雅で軟弱な雰囲気のこの物語に暗雲が立ち込める。
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