海上花列伝|第六十一回から第六十四回のあらすじ
話説(さて),太田辰夫訳『海上花列伝』(平凡社 中国古典文学大系 49,1969年)の第六十一回から第六十四回のあらすじをメモしておく。これでこの章回小説も終了。
第六十一回
筋骨を舒(の)べ穿楊聊(いささか)技を試み
聡明に困(くる)しみ 菊に対し詩を苦吟す
高亜白の特訓の下,小賛は詩作に明け暮れる。亜白が一笠園を散策していると姚文君が現れた。暴れん坊の頼公子がまた上海に現れたので一笠園に逃れてきたという。
斉韻叟不在の一笠園で高亜白が菊花の宴を催す。葛仲英と呉雪香,華鉄眉と孫素蘭,李鶴汀と楊媛媛が来園。みんなの話題は頼公子のこと。先日,頼公子が鶴汀らと賭博に行き,ペテンにかかって十数万ドル失ったという。頼公子はペテンにかけた連中への復讐を誓っているという。
すると小賛に連れられて趙樸斎が現れる。樸斎は「史三公子が上海に帰ってきたというが」と高亜白に尋ねるが,亜白は「それは三公子ではなく頼公子だ」と告げる。樸斎は落胆して帰宅。
小賛は亜白から与えられた課題の詩を披露する。一同は詩の出来栄えを称賛する。
第六十二回
大姐を愉(よろこ)ばせ 床頭 好夢に驚く
老婆(つま)と做(な)り 壁後 私談を泄(も)らす
史三公子から全く連絡がなく,趙二宝は夜も眠れない。朝になって兄の趙樸斎が女中の阿巧と同衾しているのを見つけて怒り心頭。二宝は樸斎と阿巧をボコボコに殴って叩き起こす。
二宝は三公子の様子を探ろうと,樸斎を南京に送り出す。また,樸斎との仲を裂こうと,阿巧を首にしようとする。しかし,阿巧の周囲の人々の抵抗により,二宝は折れ,樸斎と阿巧の結婚を認める。
樸斎が南京から戻り,三公子が別の女性と結婚したことを報告。これを聞いた二宝はショックで昏倒する。
二宝が三公子に捨てられたというニュースは上海中に広まった。洪善卿や陳小雲も周双珠宅でその話題を口にする。芸者が金持ちの正夫人になろうとして失敗したのは,李漱芳が1人目,趙二宝が2人目。そして3人目は周双玉だと一同が盛り上がっているところに,双玉が出現。
第六十三回
集腋成裘(かねをだしあい) 良縁 湊合(まとま)り
移花接木(みうけのかたがわり) 妙計 安排す
周双玉は朱淑人の婚約のことを知る。双玉は淑人を呼び出し,無理心中を図るが失敗。かろうじて死を免れた淑人は双玉に「人でなし」「死んだブタ」と罵られ怯える。
洪善卿は周双珠と連携して,双玉と淑人の問題の解決を図る。
第六十四回
喫悶気(くやしさに)怒って纏臂金(うでわ)を捨て
暗傷中(つげぐちされ)猛(たちまち)窩心(みぞおち)脚を蹴らる
洪善卿がとりなし,周双玉は10000ドルで朱淑人を許すことにする。
趙家では樸斎と二宝の母,洪氏が病に伏せている。薬代が無く二宝の腕輪を質に出すほどの困窮ぶり。
すると二宝に来客。三公子が来たかと思いきや,公子は公子でも乱暴者の頼公子だった。
頼公子に三公子の婚約破棄の件で揶揄されて二宝は頼公子につれなくする。頼公子は二宝の態度に激怒し,取り巻きに命じて二宝の家具調度品を破壊しつくす。
全財産を失った二宝は憔悴してベッドに横たわる。そして三公子が迎えに来る夢を見るものの,それはたちまち悪夢に転じる。二宝は冷汗びっしょり・心臓バクバクの状態で起き上がる。
ということで,なんと趙二宝が三公子に捨てられた上に,頼公子の乱暴狼藉に遭うという悲劇でこの『海上花列伝』は終了。この幕切れ,これはこれで面白い。朱淑人に裏切られた周双玉が朱淑人から10000ドルをせしめるというのも対照的で良い。洪善卿が良心だけで問題解決を図るはずがない。おそらく手数料を朱藹人・淑人兄弟からせしめるはずである。芸者と名士たちの化かし合い。到底是上海人(さすがは上海人)。
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