海上花列伝|第五十六回から第六十回のあらすじ
話説(さて),太田辰夫訳『海上花列伝』(平凡社 中国古典文学大系 49,1969年)の第五十六回から第六十回のあらすじをメモしておく。
第五十六回
私窩子(いんばい)の潘三 <月去>篋(ぬすみ)を謀り
破題児(はじめて)姚二(姚季蓴) 勾欄に宿る
夏余慶は斉韻叟からの情報として,山家園の賭博場に手入れがあることを徐茂栄に教える。
潘三のところに来ていた先客は李鶴汀の執事・匡二だった。余慶,茂栄,趙樸斎らの客が帰ってから潘三は匡二に何やら耳打ち。
そのころ,黄翠鳳宅では羅子富,姚季蓴,王蓮生,洪善卿らが大宴会。散会となったとき,姚季蓴が一同を,明日,慶雲里の芸者・馬桂生宅に招くと宣言。
翌日,羅子富と黄翠鳳は明園に茶を飲みに出かける。そこで沈小紅とその愛人・俳優の小柳児を見かける。小柳児は翠鳳の手首に嵌められた日本製の腕輪をじろじろと見る。翠鳳は気分を害し,羅子富と帰宅。帰宅すると階下に住む芸者の文君玉が詩の勉強中。
夕刻になり,馬桂生宅で宴会。散会後,姚季蓴は泥酔してうっかり馬桂生宅に一泊。すると翌日,姚季蓴の夫人から桂生に招待状が届く。姚夫人は嫉妬深く,以前(第二十三回),季蓴の馴染みの芸者・衛霞仙宅に押し掛けてきたほど。怯える季蓴を制し,桂生は姚夫人が待つ壺中天西洋料理店に向かう。
第五十七回
甜蜜蜜(うまうまと)醋瓶頭(やきもちやき)を騙過(だま)し
狠巴巴(にくにくしげに)到沙鍋底(とことんまで)問う
壺中天で馬桂生は姚夫人と会食。馬桂生の誠実さ(笑)に姚夫人はすっかり感服し,姚季蓴のことを任せることにする。
葛仲英が呉雪香宅で王蓮生の送別会を開催。散会後,王蓮生は洪善卿とともに公陽里の周双珠・双玉宅を訪れる。蓮生は煙草を吸いながら急にはらはらと涙を流す。沈小紅とも張蕙貞ともうまくいかず気が塞いでいるためである。
蓮生が帰宅した後,善卿は双珠と会話。朱淑人と周双玉をどうするか,というのが話題。翌日,善卿は朱淑人を訪ね,双玉を落籍してあげたらどうかと言う。淑人は後日回答する,と言葉を濁すのみ。淑人は善卿が帰った後,斉韻叟にもう一度相談しようと考える。
第五十八回
李少爺 積世資(ぜんざいさん)を全傾(かたむ)け
諸三姐 瞞天<言荒>(でたらめ)が善撒(じょうず)
朱淑人が一笠園を訪ねると,李鶴汀や高亜白が麻雀の真っ最中。淑人も仲間に入れられてしまう。そこに斉韻叟が現れるが,人が大勢いるため,淑人は話を切り出せない。
そうこうしているうちに李鶴汀は一笠園を退出。賭博場に向かう。李鶴汀は賭けに大敗し,16000ドルの負けとなる。借金ができた鶴汀は,叔父の李実夫が持っている,油1000樽分の預かり証を金に換えようとたくらむ。そして実夫が滞在している諸十全宅に向かう。
諸十全宅では医者が李実夫を診察していた。実夫は顔一面にかさぶたができている。十全に梅毒をうつされたのである。だが,諸十全とその母・諸三姐はそれを濡れ衣だと主張する。
鶴汀は実父から預かり証を入手できなかったため,家屋の権利書を抵当に10000ドル借りることにする。羅子富がこの権利書を預かり,銭荘から金を借りる。そして権利書を黄翠鳳宅の文書箱にしまう。
第五十九回
文書を攫うに連環計を借用し
名気を稼ぐに和韻詩を題するを央(もと)む
黄翠鳳の女将だった黄二姐はたびたび翠鳳に金の無心に来るが,翠鳳は応じない。そこである日,黄二姐は翠鳳が所持している落籍の証文を盗み,それを抵当にとって翠鳳から金を得ようとたくらむ。しかし,黄二姐は間違えて羅子富が所持していた鶴汀の家屋の権利書を盗んでしまった。子富は黄二姐に権利書の返還を要求するが,黄二姐はこの権利書を抵当にとって子富から10000ドルをゆすろうとする。困った子富は友人の湯嘯菴に権利書を取り戻すよう依頼する。
黄翠鳳の家の一階の住人,芸者の文君玉はヘボ詩人方蓬壺の弟子である。蓬壺は君玉に頼まれて詩の代作をする。詩句を練りながら街を歩いていたところ,芸者・趙桂林の仲居につかまり,強引に桂林宅に連れ込まれる。
第六十回
老夫妻を得 煙霞(アヘン)の癖有り
監守(るすばん)自ら盜み雲水蹤(あしあと)無し
方蓬壺は趙桂林宅で風邪をひく。桂林はアヘン中毒という欠点がある。しかし,桂林が甲斐甲斐しく蓬壺を看病するので,蓬壺は心が動き,桂林を妻に迎えることにする。
趙桂林の家の一階には芸者の楊媛媛が住んでいる。そこで李鶴汀,朱藹人,湯嘯菴,陳小雲らが宴会を開いていた。宴席では先日の鶴汀の借金の話が出た。嘯菴は鶴汀に「あなたの権利書は危ないところだったんです」と言い,羅子富が黄二姐にゆすられて,権利書を取り戻すために5000ドル支払ったということを伝えた。
宴会が終わり,李鶴汀が宿に戻ると,鶴汀のトランクが開けられ,金品が奪われていた。潘三に唆された執事の匡二の仕業だと思われる。鶴汀は警察に知らせた後,斉韻叟にも相談しようと一笠園に向かう。しかし,一笠園には韻叟はおらず,高亜白がいるだけだった。
高亜白は韻叟の下僕・小賛に試作を教えているところだった。
ということで,賭博で16000ドルを存したり,執事に金品を奪われたり,散々な目に合う李鶴汀。叔父は梅毒だし。それはそうと朱淑人は周双玉をどうするつもりなのか?
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