桜井由躬雄『緑色の野帖』を読む
2012年に亡くなった東南アジア史の大家桜井由躬雄の著書『緑色の野帖―東南アジアの歴史を歩く』(めこん)を読んでいる。
東南アジア各地を巡って考えたことが記されているのだが,全編を通じて,「地域研究」とは何かという問題意識が貫かれている。
「地域研究の本旨は,地域の理解につきる」(18頁)
そして,「理解するとは美しいと思えることだと気づいた」(23頁)のだそうだ。至言である。
地域を理解する上で欠かせないのがフィールドワークである。そのことを著者はこう語っている:
「カシミール山地の雪の中で,ローマのスラムの喧騒の中で,南仏の小さな町で,華北のトウモロコシ畑の中で,私は景観の中に歴史を動かせること,歴史を論理としてではなく,画像として認識することのすばらしさを知らされた」(438頁)
確かに,ラオスのことはラオス,ネパールのことはネパールに行って初めて体感させられる。身体を通して理解するということは実際にある。
ちなみに,本書の題名「緑色の野帖」とは,これのことである:
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