海上花列伝|第三十一回から第三十五回のあらすじ
引き続き,太田辰夫訳『海上花列伝』(平凡社 中国古典文学大系 49,1969年)の第三十一回から第三十五回のあらすじをメモしておく。
第三十一回
長輩(めうえ)は埋冤(うら)みて親情断絶し
方家(たいか)は貽笑(わらわ)れて臭味(いき)差池(あわず)
趙樸斎の留守中,清和坊の趙一家宅で施瑞生らが芸者を呼んで宴会。樸斎が帰宅して趙二宝らに聞いてみると,陸秀宝も来ていたとのことで樸斎はぎょっとする。
翌日,趙一家宅に洪善卿が現れ,樸斎の母,洪氏と二宝とを詰問。いつまで上海にいるつもりなのか,清和坊がどんなところなのか知っているのか,施瑞生が何者なのか知っているのか,と。
善卿が帰った後,洪氏,樸斎,二宝,瑞生,張秀英で協議。善卿を相手にしないこと,あとは瑞生に任せることなどを決める。
場所はかわって,壺中天という西洋料理店。銭子剛という男と高亜白という有名な文人が,方蓬壺という下手な文人や芸者たちを交えて食事をしている。食事後,銭子剛は高亜白を連れて黄翠鳳宅を訪ねる。
第三十二回
諸金花は法(てほん)に効(なら)い,皮鞭を受け
周双玉は情を定め手巾(ハンカチ)を遺(おく)る
銭子剛は黄翠鳳の意中の人であった。翠鳳は羅子富の金で落籍し,子剛と一緒になろうと目論んでいる。
そんなことを知らない羅子富は洪善卿,陶雲甫・玉甫兄弟,朱藹人・淑人兄弟らとともに公陽里の芸者,周双珠宅で宴会を始める。宴席の陰で,周双珠の妹分・周双玉と朱淑人は親密さを増す。
翌日,洪善卿は王蓮生の招きで張蕙貞宅に行く。そして蓮生の依頼で沈小紅のための翡翠の装身具一式を調達することになる。
第三十三回
高亜白 詞を填(つく)り狂って地に擲(なげう)ち
王蓮生 酒に醉い怒り天に沖す
王蓮生は洪善卿が調達した装身具を持って沈小紅宅を訪ねるが,小紅の機嫌は良くならない。
蓮生は小紅宅を後にし,葛仲英の招きで呉雪香宅の宴会に参加。そこには高亜白がおり,酒をあおりながら詩作にふける。
酒宴が終わり,泥酔した蓮生は小紅宅に戻る。そこで蓮生は小紅と人気俳優の小柳児の房事を目撃する。蓮生は猛虎のごとく怒り,小紅の部屋の調度品を壊しまくる。大暴れしたのち,蓮生は外に飛び出し,張蕙貞宅に行く。そして,蓮生は蕙貞を落籍し,第二夫人として迎えることを決意する。
第三十四回
真誠を瀝(ひれき)し 淫凶甘んじて罪に伏し
実信(たしかなしらせ)に驚き 仇怨激して成親(えんぐみ)す
王蓮生と沈小紅のトラブルを仲裁するため洪善卿が奔走。小紅は蓮生に謝るが蓮生は取り合わない。その間にも蓮生と蕙貞の婚礼準備は進み,5月8日,挙式となる。
翌5月9日,披露宴が開かれ,王蓮生の友人知人,芸者衆が呼ばれる。高亜白も列席し,そこで姚文君という芸者と知り合う。沈小紅も披露宴に呼ばれ,不承不承蕙貞に挨拶する。蕙貞は芸者衆に贈り物を渡すが,沈小紅がもらったのは飛び切り上等の品だった。
第三十五回
煙花(げいしゃ)に落ち貧を療(いやす)に上策無く
殺風景 善く病むに同情有り
趙二宝は張秀英と借金のことで喧嘩をし,挙句に芸者屋を始めると言い出す。趙一家は鼎豊里に家を借りて商売を始める。洪善卿はこれを知ってあきれる。
6月中旬,陶雲甫・玉甫兄弟は納涼のため,李漱芳とその妹分・浣芳を連れて明園に出かける。しかしそこで浣芳が熱を出したので帰宅することに。
玉甫と漱芳が看病した結果,浣芳の熱は下がるが,今度は漱芳の具合が悪くなる。
というわけで,沈小紅は俳優との浮気がばれて王蓮生の愛を失い,張蕙貞がひとまず勝利することとなった。周双玉と朱淑人の恋愛は順調。趙樸斎・二宝兄妹は水商売を開始。それはそうと,陶玉甫が心配する中,李漱芳はどんどん衰えていく。
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