袁清林『中国の環境保護とその歴史』メモ(その1)
袁清林著・久保卓哉訳『中国の環境保護とその歴史』を読んでいる。
中国の史書から自然環境の保護に関する事項を集め,整理した本であるが,面白い。以下は自分用の備忘録。
「第1章 序論」より
(環境の定義)
中国では1979年9月13日の第五期全国人民代表大会常務委員会第十一回会議原則で通過した「中華人民共和国環境保護法(試行)」第3条において環境を以下のように定義している:
「環境とは,大気,水,土地,地下資源,森林,草原,野生動物,野生植物,水生生物,名勝古蹟,景勝遊覧区,温泉,療養区,自然保護区,生活居住区等である」
名勝や景勝地が入っているのが面白い。日本ならば景観というところだろう。
(環境問題)
現在直面している環境問題は大きく2つに分かれる。ひとつは「生態と自然資源の破壊」,もうひとつは「環境の汚染」である。
(環境保護)
上述の環境問題への取り組みとして「自然保護」と「汚染制御」がある。古代においては環境保護とは「自然保護」のことだった。古代の環境保護:自然保護は現代の環境科学の誕生と発展に影響を及ぼしていると考えられる。
「第2章 中国の原始人類の環境」より
中国の新石器時代は7000年前に始まる。この時代に原始的な農業と人工的な住居の建設が始まった。これによりヒトは自然の克服,環境の改造を始めた。神農氏,有巣氏の業績はこの時代のヒトの活動を表しているのだろうとか郭沫若は考えている。
4000年以上前は堯舜の治世に比定される。両帝の業績として猛獣駆除(伯益が担当)と治水(禹が担当)が挙げられる。猛獣駆除は現代人から見ると環境破壊にほかならないが,当時の人々からすればやむを得ないことである。
夏殷時代の北方地域は現在よりも温暖湿潤であった。詩経には森林の豊かさがうたわれている。
殷代には狩猟区の管理,周代には山林の保護が行われた。
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