言語類型は循環的に変化する
ディクソンの『言語の興亡』には面白い話が書いてある。
言語類型が循環的に変化するという話だ。
言語はだいたいのところ,孤立語,屈折語,膠着語の3つに分類される。この分け方はシュライヒャーが唱えた古典的な分け方で,今では抱合語という分類もあるが,とりあえず,孤立語,屈折語,膠着語の3つを考える。
この3つは例えば,孤立語→膠着語→屈折語→孤立語→・・・というように循環的に変化するのだという。ディクソンは時計の針の移動に例えた。
屈折語を12時に置くと,孤立語は4時,そして膠着語は8時に位置するという。
印欧祖語は12時ぐらいに位置したと考えられるが,その後継者である諸言語は,それぞれ孤立語的な傾向を深めていった。英語なんかその典型で,屈折の多くが消滅し,語順で文意を伝える,孤立語になりつつある。
ディクソンによると中国語も長い歴史の間に変化し,初期中国語は3時,古典中国語はかなり純粋な孤立語で,4時,そして近代中国語は膠着語的傾向が深まり,5時ぐらいに位置するという。
また,ドラヴィダ祖語は孤立語寄りの膠着語で7時ぐらいに位置していたが,近代ドラヴィダ諸語は屈折語の性質を帯び,9時ごろに位置しているという。
フィン・ウゴル祖語は9時あたりに位置していたと考えられるが,次第に屈折語の性質を帯び始め,今ではフィン・ウゴル諸語は10時か11時頃に位置しているという。
ということで,言語は一つの姿をとどめることなく,文法もまた常に変化していくものである。
日本語が古代から現代にかけてどのように変化してきたのかを調べるのも面白かろうと思う。
そういえば,言語の変化についてはコセリウが書いていたので,再読しないと。
言語変化という問題――共時態、通時態、歴史 (岩波文庫) E.コセリウ 田中 克彦 岩波書店 2014-11-15 売り上げランキング : 275854 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
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