海上花列伝|第十六回から第二十回のあらすじ
引き続き,太田辰夫訳『海上花列伝』(平凡社 中国古典文学大系 49,1969年)の第十六回から第二十回のあらすじをメモしておく。
第十六回
大戸(かねもち)は搨便宜(やすものがい)をして果毒(びょうどく)を種(う)け
打花和(はなあわせ)の小娘 消遣(あそび)に陪(くわわ)る
李実夫が注目した野鶏(やち=娼婦)は諸十全と言った。実夫は十全と馴染みになる。
一方,李実夫の甥,李鶴汀は芸者・楊媛媛宅で賭博に興じる。
第十七回
別に心腸(かんがえ)有りて 私(ひそか)に老母を譏り
何の面目を将(もっ)て 重ねて賢甥(おい)を責めん
洪善卿が公陽里の芸者,周双珠宅に行くと,双珠の妹分,双玉が不機嫌でストライキをしている。善卿と双珠が宥めた結果,双玉は機嫌を直し,出勤する(お座敷に出る)こととする。
周双玉が李鶴汀,王蓮生,朱藹人らが参加している宴席に顔を出すと,そこには眉目秀麗の少年がいた。朱藹人の弟で,朱淑人という。双玉と淑人は互いを気にし始める。
周双珠宅で洪善卿が休んでいると,そこに趙樸斎の下宿の者が訪ねてくる。趙樸斎が暴漢に襲われ,大けがをして仁済医館に入院中だという。善卿が仁済医館に行くと,頭や手に包帯を巻いた樸斎がいた。王阿二の客たちに殴られたのだという。善卿は樸斎に言わんこっちゃないと説教する。
第十八回
夾襖(あわせ)を添うる厚誼は即ち情を深め
双台(二つのテーブル)を補う阜財(たいきん)は能く慍(いかり)を解く
陶玉甫は肺を病んでいる芸者・李漱芳を見舞う。そこに玉甫の兄,陶雲甫が現れ,3月3日に屠明珠邸で大富豪・黎篆鴻の誕生会を開くことを知らせる。会の主催者は陶雲甫・玉甫兄弟,朱藹人・淑人兄弟,李実夫,李鶴汀の6名である。
その頃,誕生会の一人,朱藹人は芸者・林素芬宅にいた。素芬は藹人と夕食をともにしながら,屠明珠の悪口ばかり言う。
第十九回
錯(あやま)って深心を会し両情浹洽(うちと)け
強(し)いて弱体を扶(おこ)し一病纏綿(まつわ)る
屠明珠邸で黎篆鴻の誕生会が始まる。劇団や十数人の芸者が呼ばれ,会は盛大なものとなる。芸者たちの中には周双玉がいた。黎篆鴻は朱淑人と双玉が似合いのカップルであると考え,両者を結び付けようとする。
誕生会の途中であるが,黎篆鴻は昼寝をする。誕生会は一時中断となり,陶玉甫は李漱芳を見舞いに行く。
第二十回
心事を提(の)べ 鏡に対し譫言(うわごと)を出し
情魔を動かし同衾■夢(がくむ=悪夢)に驚く
李漱芳は陶玉甫を黎篆鴻誕生会に送り返し,ベッドで一人静養する。しかし,部屋に入り込んできた黒猫に脅かされてなかなか休めない。
そうしているうちに陶玉甫が帰ってくる。また漱芳の妹分,浣芳も部屋にやってくる。漱芳は玉甫に対し,自分の命は長くない,死後は浣芳を嫁に迎えてほしいと頼む。これを聞いて浣芳は大泣きする。
夜中になり,玉甫・漱芳・浣芳の三人が一つのベッドで寝ていると,漱芳が悪夢にうなされる。
翌朝,黎篆鴻が急な用件で上海を離れるという連絡が玉甫のもとに届く。
というわけで,朱淑人と周双玉という若いカップルの誕生,死に行く李漱芳とそれを支える陶玉甫という悲喜こもごものエピソードが加わる一方,趙樸斎が王阿二の客たちに殴られるというなんともしまらないエピソードも登場する。やはり樸斎は実家に帰った方がいいんじゃないだろうか。
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