日本人の科学技術観は150年間変わっていない
年末年始,この本も読んでいる:
山本義隆『近代日本150年――科学技術総力戦体制の破綻』(岩波新書,2018年1月)
一般的には,日本の近現代を,明治維新から太平洋戦争敗戦までの「戦前」とそれ以後の「戦後」に二分することが多い。
これに対し著者は序文の中で
「日本は,明治期も戦前も戦後も,列強主義・大国主義ナショナリズムに突き動かされて,エネルギー革命と科学技術の進歩に支えられた経済成長を追求してきたのであり,その意味では一貫している」
と述べているが,実に卓見である。
そう。
科学技術に関しては幕末から現代に至るまで,日本人の平均的な見方は変わっていない。
敗戦に関しては,明治以来の科学技術志向から逸脱して精神主義に陥ったのが原因であるとする識者は多い。
本書第6章では,山下奉文大将が戦後に日本の敗因を米記者に問われた際,「科学」と叫んだというエピソードが紹介されている。
幕末,識者たちは科学技術が国家の基だと考えた。そして,敗戦後,再び,識者たちは科学技術が国家の基だと考えた。科学技術進展のために総力を挙げる姿勢は150年間変わっていない。
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