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2018.12.30

リチウムイオンバッテリー臥薪嘗胆

スマホ、電気自動車などに利用されて大活躍のリチウムイオンイオンバッテリー(リチウムイオン二次電池)。

その生みの親、元旭化成の吉野彰氏による回顧録『リチウムイオン電池が未来を拓く』を読んだ。

リチウムイオンバッテリーの意義や技術的に重要なポイントを、軽妙な文章でわかりやすく説明してくれる本である。半日以内で気軽に読める。

現在,リチウムイオンバッテリーには様々なバリエーションが存在するが,吉野彰氏が開発した初めての実用的・商用的リチウムイオンバッテリーとは次のようなものだった:

カーボンを負極とし,LiCoO2(コバルト酸リチウム)を正極とする非水系有機電解液二次電池」(7頁)

ここで,二次電池とは充電可能な電池のことである。充電できない使い捨ての電池は一次電池という。

電解液として,イオンが溶けた水を用いるのが水系電解液である。しかし,水系電解液の電池は起電力を高くできない。そこで,水ではなく有機溶媒を用いる「非水系電解液」の電池が必要となるのだが,一次電池はともかく,二次電池は存在していなかった(下表参照)。そこで,著者らがチャレンジしたのが,非水系電解液二次電池だった。

  水系電解液電池 非水系電解液電池
(高電圧/高容量)
一次電池
(使い捨て)
マンガン乾電池
アルカリ乾電池
金属リチウム一次電池
二次電池
(充電可能)
鉛電池
ニッカド電池
ニッケル水素
???

ということでねらいは明確だったのだが,実際に作るとなると,材料探しが大変である。

電池の重要な構成要素は,正極材,負極材,電解液,バインダーの4つである。

バインダーというのは言わば糊である。例えば正極を作ろうとすれば,正極の集電体(アルミ箔や銅箔といった電極の基盤)に正極材(ここではLiCoO2(コバルト酸リチウム))の粒子を張り付けるための糊としてのバインダーが必要になる。

このバインダー一つをとっても,ちょうどいい塩梅に塗布でき,LiCoO2(コバルト酸リチウム)を集電体にくっつけることができるものを探し当てなくてはならない。塗布する装置自体が高価で,実験機でも数千万円,生産機では10億円もするというから驚きである。著者たちは実験のために,他社の塗布機を1時間10万円で借りたという。

正極材としてLiCoO2を,負極材としてカーボンを探し当てるのも大変な労苦を要したわけで,リチウムイオンバッテリーが商用化は著者らの臥薪嘗胆の賜物である。

そういった臥薪嘗胆を,開発当時の世相(レコード大賞受章曲だの強盗事件だの)を交えながら面白おかしく語ってくれるあたり,上手な講演を聞いているようで楽しい。

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