ディクソン『言語の興亡』を読む
印欧語族を対象とした比較言語学の進展は「系統樹モデル」の発達を促した。
「系統樹モデル」は印欧語族にうってつけの言語発達モデルで,印欧語族の場合,この語族に属する全ての言語は「印欧祖語」から分岐したものとされている。
もしこのモデルが人類の住む全ての場所・全ての時代に当てはまるとすれば,今頃は天文学的な数の言語が話されているはずだ。
しかし、現実にはそうはなっていない。
そこでディクソンが考えたのが言語発達の断続平衡説である。
言語発達には長い平衡期と短い中断期があるという。
そして平衡期には言語は次第に収束してゆき,中断期には分裂が進むというのだ。
「共通祖語から分岐した多くの派生言語を持つ系統樹モデルは中断期にのみ適用される。また中断期の前後をとり囲む平衡期には言語特徴が伝播波及し,言語圏が形成される。ある一地域に存在する複数の言語は徐々に一つの共通の原型に向かって収束するのだ。」(R. M. W. ディクソン著,大角翠訳『言語の興亡』,p. 6)
そして,ディクソンはこの2000年間はまさしく中断期であり,とくにここ数世紀はヨーロッパ人の世界進出によって,世界各地の言語的平衡状態が破られ続けている状態なのだと主張している。
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