佐向大監督・脚本/大杉漣主演『教誨師』を観た
YCAMで佐向大監督・脚本の『教誨師』(大杉漣主演・エグゼクティブプロデューサー)を観た。
大杉漣の遺作。
教誨師として死刑囚に向き合う,プロテスタントの牧師・佐伯保を大杉漣が演じている。
回想シーンとラストシーンを除き,ほぼ全編が教誨室という密室で展開される会話劇である。
つまりセリフと顔の表情,上半身の動き,手の動き,といった制限された表現手段のみで物語が展開していく。
動きが制限される中でどれだけ演技力を発揮できるのか,役者の技量が問われる。
大杉漣をはじめ,玉置玲央,烏丸せつこ,五頭岳夫,小川登,古館寛治,光石研といった演技派俳優たちが見事にそれぞれの役を果たし切った。
今挙げた,大杉漣以外の6名は全て死刑囚の役である。
障害者福祉施設で17名を殺害しながら,自らの思想を堂々と語る高宮(玉置玲央)。
監禁暴行致死の主犯にして饒舌な嘘つき,野口(烏丸せつこ)。
ホームレスで文盲の老人,進藤(五頭岳夫)。
野球のバットで一家を皆殺しにした,小心者の小川(小川登)。
沈黙を続けるストーカー殺人犯,鈴木(古館寛治)。
陽気なヤクザの組長,吉田(光石研)。
どれもこれも癖のある人物。
牧師・佐伯保(大杉漣)はこれらの人々を更生に導くべく教誨を続けるわけだが,当然一筋縄ではいかない。特に,高宮の場合は「人が人を殺すこと」について議論を吹っ掛け,佐伯が返答に窮するような状況に追い込んだりする。教誨師という立場であっても,佐伯が平静を保つことが当然難しい時もある。そのときの感情の起伏をセリフと手の動きで表現する大杉漣はさすが。
野口を演じる烏丸せつこも素晴らしい。この人はNHK「未解決事件」シリーズの再現劇で角田美代子を怪演した(「file.03 尼崎殺人死体遺棄事件」)が,その時の迫力たるやすごかった。それがそのままこの教誨室に移動してきたかのような雰囲気だった。
これら6名の死刑囚と向き合う中で,やがて,牧師・佐伯保の隠された過去も次第に明らかになってくる。
この映画のラスト,文盲の老人・進藤から手渡されたグラビア写真を佐伯保が開くのだが,そこには佐伯が進藤に教えたひらがなで,こう書かれてあった:
このなかでだれのみが
わたしにつみがあると
せめうるのか
佐伯は進藤を通してイエスに対面したのだろうか?
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