いしかわじゅん『約束の地』をカタストロフ神話として見る
今から40年近くの昔に書かれた漫画,いしかわじゅん『約束の地』を浦沢直樹『20世紀少年』と照らし合わせてみると,物語を構成する重要な素材,つまり神話素にいくつかの共通点が見られる。
表にまとめると,次のようになる。
神話素 | いしかわじゅん『約束の地』(1981) | 浦沢直樹『20世紀少年』(1996~2006) |
---|---|---|
謀略組織 | 農水省,影の農協 | ともだち,友民党 |
ウィルス | 進行性農夫病を引き起こす | 出血死に至る |
国民的歌手 | 村田春夫 | 春波夫 |
カタストロフ | ウィルス感染による文明崩壊→新世界秩序 | ウィルス感染による大量死→新世界秩序 |
モティーフ | 戸来村キリスト伝説 | T・レックス,万博 |
陰謀とカタストロフは魅力的な素材であり,物語の構造は変化しつつも,神話として繰り返し語られる。
『約束の地』が書かれた時代は,カルトや陰謀論を笑い飛ばすことができたが,『20世紀少年』が書かれた時代には,冗談ではすまなくなってきた。それが最大の違い。
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