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2018.11.04

いしかわじゅん『約束の地』をカタストロフ神話として見る

今から40年近くの昔に書かれた漫画,いしかわじゅん『約束の地』を浦沢直樹『20世紀少年』と照らし合わせてみると,物語を構成する重要な素材,つまり神話素にいくつかの共通点が見られる。

表にまとめると,次のようになる。

神話素いしかわじゅん『約束の地』(1981)浦沢直樹『20世紀少年』(1996~2006)
謀略組織農水省,影の農協ともだち,友民党
ウィルス進行性農夫病を引き起こす出血死に至る
国民的歌手村田春夫春波夫
カタストロフウィルス感染による文明崩壊→新世界秩序ウィルス感染による大量死→新世界秩序
モティーフ戸来村キリスト伝説T・レックス,万博

陰謀とカタストロフは魅力的な素材であり,物語の構造は変化しつつも,神話として繰り返し語られる。

『約束の地』が書かれた時代は,カルトや陰謀論を笑い飛ばすことができたが,『20世紀少年』が書かれた時代には,冗談ではすまなくなってきた。それが最大の違い。

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