民喜と周作とU子と
原民喜が自死する前年,「みどりの季節」――民喜と遠藤周作とU子(祖田裕子)とが交流した短く輝くような時期――があったことを,本書『原民喜 死と愛と孤独の肖像』で初めて知った。
1944年,最大の理解者だった妻・貞恵の臨終を見た原にとって,生涯はすでに終わったようなものだった。
しかし広島の原爆から奇跡的に無傷で生き残った彼は,「生キノビテ コノ有様ヲツタヘヨ」との天命を感じ,敗戦直後の困窮の中で『夏の花』をはじめ,陸続と作品を発表する。
そして,戦争の災禍を乗り越えてきた若者たち,すなわち遠藤周作や祖田裕子と出会い,彼らに希望を見出した。
原は周作たちにバトンを渡した後,この世を去ったのである。
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